エンジン版と共有部品ナシ! ポルシェ・マカン・エレクトリックへ試乗 ちゃんと「らしい」 航続500km以上

公開 : 2024.04.25 19:05

新プラットフォームを採用した電動マカン バッテリーは95.0kWh 航続距離500km以上 日常的な扱いやすさはトップクラス RS3の体験と重なる走り 一般道で評価

アウディとプラットフォームを共同開発

このSUVへ求められる当面の使命は、電気で動く「ポルシェ」の「マカン」であること。実際のところ、簡単ではない。

内燃エンジンで走るマカンには、クラス最高の動力性能に、家族が快適な車内空間、長距離旅行との親和性、718ケイマンを過度に羨ましがらずに済む運転の楽しさという、多能性が求められてきた。目立った弱点はないといえた。

ポルシェ・マカン 4 エレクトリック(欧州仕様)
ポルシェ・マカン 4 エレクトリック(欧州仕様)

しかし、バッテリーEVでは条件が違う。航続距離、価格、車重という避けがたい課題がある。2026年に引退予定の、エンジン版へ匹敵する訴求力は備わるだろうか。一般道での試乗で確かめてみよう。

ポルシェは、理想とする電動マカンを創出するうえで、新しいプラットフォームが必要だと判断した。それが、プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)と呼ばれるもの。見た目は似ていても、既存モデルとは技術的に完全な別物といっていい。

同社の技術者、ヨルグ・ケルナー氏によれば、部品は1つも共有していないとか。ボンネットに添えられる盾型のエンブレムですら、異なるらしい。

PPEはアウディと共同開発され、同社のQ6 e-トロンの基礎骨格にもなっている。2026年に発売予定の、電動カイエンにも登用されている。2030年までに販売の8割をバッテリーEVにするという目標へ、ポルシェは着実に歩みを進めている。

同社の総売上の半分以上を、現在はマカンとカイエンが稼ぎ出している。極めて重要な縁の下の力持ちとして、PPEは機能する。

バッテリーは95.0kWh 航続距離は500km以上

正式名称は、マカン・エレクトリック。当初設定されるグレードは、「4」と「ターボ」の2種類だ。

前後に駆動用モーターが載るが、4のユニットはボッシュ社製で、システム総合405ps。ターボは、リミテッドスリップ・デフ内蔵のポルシェ独自ユニットで、総合639psを発揮する。

ポルシェ・マカン 4 エレクトリック(欧州仕様)
ポルシェ・マカン 4 エレクトリック(欧州仕様)

搭載位置は、各アクスルの後ろ側。Q6 e-トロンと技術的に異なる部分の1つで、ポルシェ911の伝統を汲んだもの。情感豊かな、操縦性を得るカギとなる。ちなみに、シングルモーターの後輪駆動仕様も開発途上にあるそうだ。

駆動用バッテリーは角柱状のセルで、容量は95.0kWh。航続距離は、ターボが518-590km、4では516-613kmがうたわれる。制御電圧は800Vで、急速充電能力は270kWに対応し、理想条件なら10-80%補充を最短21分でこなせる。

急速充電器の電圧が400Vの場合、駆動用バッテリーを2分割で管理。それぞれ135kWで充電するという、バンクチャージ機能も備わる。

ポルシェのインテグレーテッド・パワー ボックスも新しい。AC充電器とヒーター、12Vのコンバーターが統合された機器で、リアシートの下へ載っている。これにより、ボンネット下へ84Lの収納空間を設けることが可能になった。

車重は、マカン Sとの比で400kg重い。そのかわり、重心は140mm低い。サスペンションは、4ではスチールコイルが標準になり、ターボではエアスプリングが標準。後輪操舵システムが、オプションで設定される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事