目の肥えた人に刺さる「縦目」 メルセデス・ベンツW108/W109型 UK版中古車ガイド(1) Sクラスのご先祖
公開 : 2024.05.12 17:45
メルセデス Sクラスのご先祖が、W108/W109型 優雅でモダンな見た目 縦に長いヘッドライトが特徴 エンジンは長寿命 複雑なサスの故障に注意 英国編集部が魅力をご紹介
目の肥えた人に刺さったW108/W109型
輸入関税が高かった半世紀前の英国では、W108型メルセデス・ベンツ250 Sは当惑するほど高額だった。値段の割にエンジンは2.5Lと小さめで、内装にはレザーやウッドが用いられず、支持を集めたとはいえなかった。
しかし、他を圧倒する乗り心地や操縦性、洗練された走行マナー、広々とした車内空間、並外れた堅牢性や製造品質などを備え、目の肥えたクルマ好きには刺さった。価格を頷かせる価値を見い出せた。
車内のドアハンドルは内装とフラットで、ウインドウのワインダー・グリップはゴム製。堅牢なドアロックや、負荷がかかると倒れるバックミラー、パッド入りのステアリングホイール・ボスなどが与えられ、安全性も高かった。
シートは、MBテックスと呼ばれる高強度なビニールレザーが標準。オプションで選べたレザーも、高級感より耐久性が優先されていた。ボディの前後は、先端をゴムで覆ったバンパーが保護した。
他方、ステアリングコラムから伸びるシフトレバーと、ダッシュボード下から伸びるハンドブレーキ・レバーへ否定的な人もいた。フロントシートは左右に独立したものではなく、身体が横滑りするベンチシートで、クルマ酔いしがちといえた。
当時の試乗レポートを見ると、装備やスペックを称えつつ、ブレーキの性能は期待外れだったようだ。自社開発された、ポンプとタービンを用いたフルード・カップリング式オートマティックも、高回転域での変速がスムーズではないと指摘されている。
優雅でモダン 縦に長いヘッドライトが特徴
1960年代半ばのビッグ・メルセデスで、主流となったのはコイルスプリングが支えるW108型の250 Sや250 SE。その頂点に位置したのが、エアスプリングでロングホイールベース、3.0L直列6気筒を搭載したW109型の300 SELだった。
W109型では、ウォールナット・パネルがダッシュボードを飾り、パワーウインドウを標準装備。1968年には、6.3LのV型8気筒エンジンを搭載した300 SEL 6.3が登場。羊の皮を被った狼的なモデルとして、6526台が生産されている。
1967年には、2.8L直列6気筒エンジンを積んだ280がW108型へ追加。1970年には、3.5LのV8エンジン版も登場している。アメリカ市場向けに、1971年には4.5LのV8も搭載されるようになり、排気量の小さい250はフェードアウトしていった。
スタイリングを手掛けたのは、フランス人デザイナーのポール・ブラック氏。過度な装飾がなく、落ち着いていながら優雅さもあり、モダンな印象を残した。縦に長いヘッドライトも特徴で、近年はますます風合いを増しているように見える。
ドイツのアウトバーンを、疲れ知らずで運転できるよう設計されており、高速道路との相性は抜群。運転席からの視認性は素晴らしく、操縦性は正確。広大な森林地帯を抜けるような一般道でも、豊かな時間を提供する。
ただし、V8エンジン版は燃費が悪く複雑。日常的に乗りたいと考えるなら、直6を探した方が賢明だろう。
画像 目の肥えた人に刺さる「縦目」 メルセデス・ベンツW108/W109 W113と114 最新SクラスとSLも 全116枚