英国「最安」ハッチバック ヤリスやクリオのシェア侵食? 2代目MG 3へ試乗 1.5L HVで194ps

公開 : 2024.05.25 19:05

システム総合194ps 加速の「波」を作る3速AT

運転支援システムのオン/オフはしやすい。タッチモニター右上のアイコンで、簡単に切り替えられる。

アダプティブ・クルーズコントロールは、先行車両との車間距離が必要以上に遠い。並走するクルマへ割り込まれても、不思議ではないほど。車線維持支援は緩やかなカーブでも操舵がギクシャクし、ドライバーがアシストする必要があるようだった。

MG 3 ハイブリッド+(英国仕様)
MG 3 ハイブリッド+(英国仕様)

車内空間は充分といえ、運転席と助手席が不自然に近いわけでもなく、高身長のドライバーが強い不満を感じることもないだろう。後席にも、2名の大人が問題なく座れる。
荷室は241Lで、クリオの254Lより小さい。背もたれを倒し、広げることは可能だ。

さて、ハイブリッドが生み出すシステム総合での最高出力は194ps。最大トルクは43.1kg-mもあり、かなり活発な走りを想像するはず。ところが実際に走らせてみると、数字ほどたくましい印象はない。

とはいえ、一般的なドライバーなら、このクラスの平均以上に速いと感じるはず。高速道路への合流も、登り坂での追い越しも、まったく不満はない。アクセルペダルを踏み込むと、ワイドなギア比を持つ3速ATが、変速する度に加速の「波」を作るが。

回生ブレーキの効きを、3段階から選べるのは便利だろう。最も強くすると、ほぼワンペダル・ドライブが可能となる。

燃費は今ひとつ 高価値でシェア拡大の可能性

シャシーは、クリオと比較すると柔らかめ。路面の凹凸へ揉まれるように、上下する印象がある。だが不快なほどではなく、すぐに落ち着く。アスファルトの剥がれた穴や、補修のツギハギには、大きな影響を受けないようだった。

ボディロールは大きめだが、カーブでは粘り強くラインを辿る。ステアリングはシャープとはいえず、スポーツ・モードでは重くなるというより、不自然な手応えが増す印象。セルフセンタリング性が明確に鋭くなる。

MG 3 ハイブリッド+(英国仕様)
MG 3 ハイブリッド+(英国仕様)

スポーティなハッチバックとはいえないが、全体的な動的特性は悪くない。クリオのように運転する自信を鼓舞することはないものの、先代の3より大幅に洗練度は増しており、このクラスでは褒められる水準といっていい。

燃費は、カタログ値で22.7km/L。今回、筆者が高速道路や市街地などを複合的に300kmほど走らせた平均では、15.9km/Lだった。クリオは18.0km/L前後だから、その差は小さくない。運転スタイルで、大きく変化するといえるだろう。

このクラスの優等生は、フランスのクリオだ。しかし、英国価格が3000ポンド(約58万円)も安い3の訴求力は侮れない。残価設定型プランの支払額も抑えられ、多くのユーザーが必要とする機能を満たし、価値に優れることは間違いないと思う。

ここ数年のMGは、クロスオーバーと電動ハッチバックで、急速に英国でのシェアを拡大中。3が属するBセグメント・クラスでも、同じ変化が起こる可能性はある。

◯:コンフォート志向な動的特性 ハイブリッド・パワートレインのパワフルさ 優れたデジタル技術と上質なインテリア ライバルよりお手頃な価格
△:エアコンの操作性 スポーツモード時のステアリングフィール 余り優れない燃費

記事に関わった人々

  • 執筆

    クリス・カルマー

    Kris Culmer

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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