【日本メディア初試乗】ついにMGに帰ってきたオープンモデル「サイバースター」マーケットはどう受け入れる?

公開 : 2024.05.01 16:05

・MGサイバースターに日本メディア初試乗
・中国資本がかつての英国の名門ブランドで送り出す2シーターオープン
・北京モーターショー開催中の中国、現地からレポート

波乱万丈のブランドネーム

イギリスの歴史ある自動車ブランド、MG。今回はMGとして21年ぶりとなる新型2ドアロードスター「サイバースター」に中国自動車メディアmewcars協力のもと、北京の広大なキャンプ場(十方至野)にて試乗した。

MGブランドは1920年代、オックスフォードにてウィリアム・モーリスが経営していた「モーリス・ガレージズ」に由来する。その後、親会社はブリティッシュ・レイランドやローバー・グループ、MGローバーなど数多くの変遷を経たが、2005年にMGローバーが倒産したことで初めて海外に渡ることとなった。

MGサイバースター
MGサイバースター    加藤博人

MGブランドと英国のロングブリッジ工場などの製造設備は中国の自動車メーカー「南京汽車」によって買収されたのち、「MG TF」の生産再開に加えて「ローバー ストリートワイズ」のリバッジモデル「MG3 SW」、「MG7」などの新規車種の生産を中国で開始した。

2007年12月、上海汽車は南京汽車を買収しMGは上海汽車傘下のブランドとなった。上海汽車はMGローバー倒産時に「ローバー75」などの生産設備を獲得していたが、ローバーの商標は買収できておらず、新ブランド「ロエウェ」にて旧ローバー車種を当時生産していた会社だ。

MGは実用的な車種を次々と投入した一方で「MG TF」の生産を2011年に終了、スポーツ車種はラインナップから姿を消した。スポーツカーというロマンは当時の中国では理解されにくい存在だったこともあり、MGがつむいできたブリティッシュ・スポーツの系譜はしばらく途絶えることとなる。

空白を経て世に出たサイバースター どんなクルマ?

それから10年後の2021年、MGは2ドアロードスターのコンセプトモデルをお披露目した。「ゲーミングスタイル」と銘打った近未来的なフォルムを持つ「サイバースター」は大きな話題を呼び、晴れて2023年に量産モデルの発売が実現した。

MGサイバースターはMG TF以来、21年ぶりとなる新たなMGの2ドアロードスターだ。全長×全幅×全高=4533×1912×1328mm、ホイールベース2689mmとボディは大きく、全長4m以下・全幅1.7m以下のMG TFと比較するとかなり大きい。また、車両重量は2075〜2210kgと、ライトウェイトスポーツにはほど遠い。

MGサイバースター
MGサイバースター    加藤博人

エクステリアはフロントバンパー下部をとがらせることで薄いノーズを演出している。だが、過度な「ロングノーズ・ショートデッキ」には仕上げておらず、往年のMGロードスターたちのような構成比率であるのには感心した。

リアでは左右外側に向いた矢印型のテールライトが強く存在を主張しており、こういう要素からもコンセプトの「ゲーミングスタイル」を感じられる。乗り込む際はドア上部のボタンを押すことでシザードアが上に展開する。ドア上部と下部両方にセンサーがついているため、障害物がある場合は途中で開閉を停止する。

車体の大きさとは裏腹にキャビンは意外とコンパクトだ。キャビン中央部のパーティションもBEVだから本来は必要ないが、このおかげでロードスター特有の「狭さ」を演出しているのだと感じた。

また、ディスプレイや物理ボタンはドライバーを中心に設計されており、助手席の乗員が操作することはあまり考えられていない。ダッシュボード上には10.25インチのディスプレイが設置され、メーター用とインフォテインメント用の2枚構成となっている。

電動ルーフはエアコン操作ディスプレイの下に位置するスイッチで操作し、素早い動きでお望みのフォルムへと変身可能だ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    加藤ヒロト

    Hiroto Kato

    山口県下関市生まれ、横浜在住。慶應義塾大学環境情報学部に在学するかたわら、各自動車メディアにて「中国車研究家」として中国の自動車事情について「クルマ好き」の視点で多様な記事を執筆する。また、自費出版で中国モーターショーのレポート本「中国自動車ガイドブック」シリーズも手掛けている。愛車は1998年型トヨタ カレンと1985年型トヨタ カリーナED。
  • 編集

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。

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