「ポニーカー」では表現不足 フォード・マスタング 289  誕生60年をルート66で祝福(2) 夢のロードトリップ

公開 : 2024.05.18 17:46

ルート66の終点 サンタモニカ桟橋

マスタングも疲れ気味なのか、交差点でエンストするように。停止時はアイドリングで落ち着いていても、アクセルペダルを傾けるとストンと止まる。ランチの直後には、交差点の真ん中でストール。右足を優しく扱い、ゆっくり曲がるのが良いようだ。

西のオールド・パサデナまで、ロサンゼルスの北側を横断する高速道路210号線へ。「アメリカのメインストリート」というあだ名が付けられているだけあって、交通量が多い。この辺りは南カリフォルニアの高級住宅地の1つで、景観は美しい。

サンタモニカ桟橋のゲートを抜けるフォード・マスタング 289
サンタモニカ桟橋のゲートを抜けるフォード・マスタング 289

この先にかかる、コロラドストリート・ブリッジは自殺の名所。大恐慌の時代には、かなりの人が命を落としたとか。現在は、高さ3mのフェンスで囲まれているという。

ただし、ルート66はその橋の手前で南へ向きを変え、ドジャー・スタジアムがあるエリシアンパークを通過する。サンセット・ブールバードとサンタモニカ・ブールバードという、有名な道とも結ばれている。試合がないからか、驚くほど静かだった。

ルート66の終点は、正式にはサンタモニカ桟橋より2つ手前の交差点。しかし、そのまま道は続き、ラッキーなら海岸まで出られるらしい。クルマが入れるかどうかは、状況で変化するそうだが、桟橋の入り口にある交差点まではわからない。

今日は運良く、ゲートの先まで進める。マックスはカメラを片手にマスタングから飛び降り、交差点を渡る。アメリカの信号は長い。数分待って、ゴールに理想的な景色を切り取ることができた。

ポニーカーは功績を表現し足りない言葉

ロサンゼルスの帰宅ラッシュは半端ない。渋滞を交わすべく、オーシャンパークを逸れる。しかし無駄なあがきで、その後2時間、405号線で過ごさざるを得なかった。

スポーティなアメリカン・グランドツアラー、初代マスタングは、見事にカリフォルニア州を横断してくれた。発売直後から大ヒットし、現代へ続く成功を掴むに至った、優れた能力の一端を披露したといえる。

フォード・マスタング 289(1964〜1965年/北米仕様)
フォード・マスタング 289(1964〜1965年/北米仕様)

控えめな直列6気筒版なら、マスタングは適度に経済的な通勤快速になった。より強力なV8エンジンを選べば、他を圧倒するマッスルカーにもなった。快適な4シーターで、価格は当時の一般的な乗用車と変わりなかった。

ポニーカーというあだ名は、6気筒仕様のみに当てはまると思う。これまで築き上げてきた功績を考えれば、表現し足りない言葉だろう。

信頼性と実用性に優れていながら、特別感はフェラーリにも並ぶ。歴代のマスタングは、数え切れないほどのドライバーを笑顔にし続けてきた。自分にも、夢のようなロードトリップを体験させてくれた。

協力:フォード・モーター社、サンランド・フォード社

フォード・マスタング 289(1964〜1965年/北米仕様)のスペック

英国価格:2662ドル(新車時)/8万ドル(約1264万円/現在)以下
生産数:68万989台
全長:4597mm
全幅:1732mm
全高:1295mm
最高速度:177km/h
0-80km/h加速:9.5秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1297kg
パワートレイン:V型8気筒4727cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:213ps/4400rpm
最大トルク:41.4kg-m/2400rpm
トランスミッション:3速オートマティック(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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