ベントレー・ベンテイガ 詳細データテスト 上質で広い 動力性能も操縦性もハイレベル 文句なく快適

公開 : 2024.05.04 20:25

内装 ★★★★★★★★★☆

ベンテイガのキャビンは、おおまかにいえば2016年からほとんど変わっていない。それでも、高級感や快適さは、時間が経っても色褪せていない。いまだにもっとも装備が充実したコクピットのひとつに数えられる。

とはいえ、フロントばかりでなく、EWBでは真骨頂であるリアにも目を向けたくなる。エルゴノミクスでは、乗車位置が高く広々した感覚と、レザーやウッドに包まれた安心感のバランスがすばらしい。ちなみに、EWBは量産ベントレーではじめて、0.07mmメタルオーバーレイパネルをオプション設定した。

素材の質感やデジタルアイテムにやや不足を感じるが、あくまでも贅沢を言えば、というレベル。デビューから時を経ても、高級感に翳りはない。
素材の質感やデジタルアイテムにやや不足を感じるが、あくまでも贅沢を言えば、というレベル。デビューから時を経ても、高級感に翳りはない。    JACK HARRISON

テスト車は傷ひとつないレザーに、柔らかく繊細で沈み込ませたステッチが真っ直ぐに入っていた。みごとなしつらえの空間だ。

気になるのは些細な点のみだ。テスト車のステアリングホイールは、シートに対してわずかに左へオフセットしている。オルガンストップ式の送風コントロールなど、クロームがプラスティッキーなところもみられる。走行モード選択ダイヤルなどの仕上げのよさとは対照的だ。そちらはひんやりとして固く、ローレット加工の手触りもうれしいアルミ製だ。ただし、機能面ではどちらも文句なしだ。

同じことはセンターのタッチ画面にも言える。10.9インチというサイズは、今どきの基準では小さめで、メニュー選択がしづらい原因にもなりかねない。しかし機能的な問題はなく、デジタル偏重なクルマにありがちな、室内の雰囲気をディスプレイが支配するようなことも感じられない。

後席は見た目も手触りも、メルセデス・マイバッハS600ほどふんわり柔らかではなく、ロールス・ロイスほどがっしりして壮大で、やや気後れさせられるようなものでもない。ちょうどその中間で、ほどよい感じだ。標準仕様は4+1座だが、ミュリナーはエアラインシートにアップグレード。後席は2座独立で、リクライニングは最大40度。運転席の後ろで940mmというレッグルームは、全長5.8mのロールス・ロイス・ファントムにほんのわずか届かないだけにすぎない。

さらに、助手席の背後はタッチスクリーンでVIPモードを選択可能。前席が前方ヘスライドし、カーペット張りのフットレストが展開。レッグルームは1200mmに及ぶ。シートは表面の温度や湿度をモニターして調整し、内蔵した6つのエア式加圧ゾーンが少しずつ圧力を変えて揉みほぐしてくれる。

開けた前方視界、リッチなマテリアル、パノラミックルーフとスリムなウインドウに囲まれてEWBを走らせていると、ジュール・ヴェルヌの世界が容易に思い浮かぶ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事