ボルボEX30 詳細データテスト 高い動力とほどほどの操縦性 物足りない乗り心地 厄介な監視機能

公開 : 2024.05.11 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

ボルボはこのクルマを、自社の基準で小さく仕立てたが、コンパクトEVのクラス標準を無視したわけではない。EX30という車名が示すように、これは完全電動のコンパクトSUVだ。イエーテボリのラインナップでは、全長がひとクラス上のモデルより200mm以上ショートという寸法となっている。

しかも5ドアでありながら、1986年デビューの480や、2006年に登場したフォード・フォーカスがベースのC30といった3ドア車よりも短いのだ。とはいえ、競合車にはこれよりさらに200mm短いジープ・アヴェンジャーのような例もあるのだが。

EX30は、スマート#1と同じく、ジーリー主導で開発されたSEAプラットフォームを採用する。
EX30は、スマート#1と同じく、ジーリー主導で開発されたSEAプラットフォームを採用する。

現時点では、全高をほどほどに抑えたクロスオーバー的なモデルのみを設定しているEX30。しかし、今年後半には、地上高を引き上げたクロスカントリー仕様が追加される予定だ。

プラットフォームはサステイナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャーと銘打たれ、略称はSEA。ジーリーが新世代電動車のため開発したコンポーネンツで、スマートの#1や#3、ポールスター4などに採用されるほか、ロータスエレトレのEPAプラットフォームのベースともなっている。

ジーリー曰く、SEAは単なるスケートボードタイプのシャシーではなく、プラットフォームのファミリーに近いものだとか。EX30では、スティールシャシーをベースに、ボディはスティールやアルミ、プラスティックで構成し、リサイクル素材の比率は60%近くに上るらしい。

室内では、プラスティック成形材の5分の1ほどがリサイクル材で、内装材は再生素材のポリエステルやデニムを使用している。

そうしたもろもろの結果として、EX30は製造から使用までを通したライフサイクル全体でのカーボンフットプリントが自社史上最小になったと、ボルボは主張する。XC40のガソリン車に比較すると、じつに半分だということだ。

そうしたサステナビリティ的な要素が、若くて環境意識の高いユーザーへ訴求することを、ボルボは期待している。しかし、エシカルな主張ばかりを押し付けるというわけではない。競合モデルの多くがそうであるように、EX30はリアモーターの後輪駆動をベースとする。最高出力は272ps、最大トルクは35.0kg-mだ。テスト車の実測重量は1779kgなので、パワーウェイトレシオはBMW i5 eドライブ40に近い。

参考までに、同じクラスのEVの車両重量を引き合いに出すなら、フォルクスワーゲンID3 58kWhが1757kg、プジョーe−2008GTが1638kgだった。

更なる高性能モデルを求めるなら、ツインモーターのパフォーマンス・プラスという選択肢もある。156psのフロントモーターを追加し、合計429psで0−100km/h加速はボルボ量産モデル史上最速の3.6秒をマークする。

バッテリーはリチウムイオンで、2種類を設定。ベーシックモデルには実用容量49kWhのリン酸鉄タイプ、エクステンデッドレンジ系とツインモーター系には64kWhのニッケル・マンガン・コバルトタイプ。テスト車のWLTPモード航続距離は476kmと、手頃な価格帯のEVとしては上々の部類だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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