ボルボEX30 詳細データテスト 高い動力とほどほどの操縦性 物足りない乗り心地 厄介な監視機能

公開 : 2024.05.11 20:25

内装 ★★★★★☆☆☆☆☆

ボルボの内装デザイナーが、EX30のキャビンをかくもスッキリとして手触りよく、訴求力のある空間に仕上げたことには賞賛を贈りたい。リサイクル素材を多用しながら、モールディングパネルや加飾トリムは魅力的でソリッドなタッチ。面白みや斬新さもある。

とはいえ、足りないものも目につく。ドライバーの前にはメーターパネルもヘッドアップディスプレイも存在しない。パワーウインドウのスイッチはセンターコンソールにあり、ドアパネルにはスピーカーもスイッチも一切据え付けられていない。

デザインをシンプルにしたのはともかく、それに伴い実用性が低下したのは問題だ。運転中に集中力を削がれずに済む操作系を構築してもらいたい。
デザインをシンプルにしたのはともかく、それに伴い実用性が低下したのは問題だ。運転中に集中力を削がれずに済む操作系を構築してもらいたい。

ドリンクホルダーは、センターアームレストの下から引き出すタイプで、その前方には小さなグローブボックスを配置。あとはシンメトリカルなレイアウトのインテリアで、右ハンドルか左ハンドルかで大きな変更が必要になる複雑な造形は加えられていない。

ダッシュボード下部に要素はほとんどなく、センターコンソール前方の浅い蓋つき小物入れに変わるストレージが追加できるくらいだ。上部にはインフォテインメントシステム用の12.3インチ縦型タッチディスプレイを設置。その画面は上端に簡素化されたデジタルメーターパネルを表示し、その下はトリップコンピューターのデータやマップ、オーディオ/電話/空調などの操作パネルが占める。さらに、フォグライトやワイパー、ADASの設定といったその他もろもろの2次的コントロール系もここからアクセスする。

言うまでもなく、これはなかなか大胆なエルゴノミクスの見直しだ。それも、われわれの基準からすれば、問題視すべき類の。ステアリングコラムからは、右側にトランスミッション、左側にメインライトと方向指示灯、フロントウインドウウォッシャーを操作するレバーが生えているが、操作系の主体はタッチ画面に集約されすぎている。

重要な機能へのアクセス性は抜群と言うにはほど遠く、ドライバビリティに重大な問題を引き起こしかねないほど深刻だ。たとえば、ドライバーモニタリングや制限速度アラームをカットするには経るべき手順が多すぎ、しかもカーソルをコントロールできる実体式デバイスは用意されないので、その手の作業をしようとすると、周囲への注意力が大きく削がれる。

ボルボが言うには、インフォテインメントのホーム画面は今年後半にもソフトウェアのOTAアップデートを実施し、問題は改善されるとのことなので、それが現実となることを望みたい。それでも大部分は、安全性重視のボルボであれば、もっとシンプルかつ容易に操作できて、集中力を逸らすことなく安心して運転できることを期待するものだ。

さらに言うなら、実用性も高めてほしい。後席も荷室も、はるかに使い勝手のいい選択肢が存在するクラスにおいては、評価するに足りるレベルではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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