ボルボEX30 詳細データテスト 高い動力とほどほどの操縦性 物足りない乗り心地 厄介な監視機能

公開 : 2024.05.11 20:25

走り ★★★★★★★★☆☆

EX30はシングルモーター仕様であっても、かなり完成度が高く上質だが、爽快で威勢のいいドライビングも楽しめる。ゼロスタートは唐突に発進するものではないが、トラクションも落ち着きもたっぷりありながら加速性能も高い。ドライだが冷えた路面では、5.7秒で97km/hに届き、48−113km/hは5.1秒だった。参考までに競合車のデータを見てみると、キア・ニロEVは6.9秒と5.6秒だった。

しかし、そのリニアにして静粛性に優れ、レスポンスにも優れたパフォーマンスを堪能する前には、このクルマの悩みどころを和らげる過程を経なければならない。その主犯格はドライバーモニタリングシステム、共犯は計器類とインフォテインメント系を集中させたセンター画面だ。

走り出す前に解決すべき問題があるのは残念だ。ブレーキ関係にも注文はあるが、そちらはこのクルマがターゲットとするEV初心者なら気にしないと思われる要素だ。
走り出す前に解決すべき問題があるのは残念だ。ブレーキ関係にも注文はあるが、そちらはこのクルマがターゲットとするEV初心者なら気にしないと思われる要素だ。

ドライバーモニタリングシステムが作動していると、センター画面のメーター表示を2〜3秒以上見ているだけで厳しく非難してくる。むしろわれわれとしては、自然な視線の近くに計器類を設置していないことを責めたいのだが。同じことは、バックミラーや、運転席側の窓外へ目を向けたときにも起こる。

これでは運転中に気が散ってしかたがないので、走り出す前にシステムをオフにしたくなる。再始動するたびにリセットされてしまうのだが、それでも毎回切ることをおすすめしたい。

その通過儀礼を終えれば、EX30はひたすら心地よく、必要十分か、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮してくれる。速さに不満はなく、少なからぬ差があるとはいえ、デュアルモーター仕様が割高で選ばなくてもいいものに思えてくるほどだ。トルクバンドは広く、高速道路の速度域でも不足を感じさせない。少なくともこの段階までは、運転しづらさは感じない。

気になるのは、エネルギー回生の手動調整機構やBレンジ、パワートレインのワンペダル運転セッティングがないことだ。ブレーキペダルを軽く踏んだあたりではモーターによる減速をうまく織り込んでくれるのだが、スロットルを抜いただけでは回生せずに前進を続けようとする傾向がある。

もっとも、パワートレインのエネルギーマネージメントがマニュアル制御できることを好むのは、たいていがEV慣れしたドライバーだろう。大多数のユーザーは、そうしたことができないシンプルな操作系でも問題視することはないはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事