ボルボEX30 詳細データテスト 高い動力とほどほどの操縦性 物足りない乗り心地 厄介な監視機能

公開 : 2024.05.11 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

ボルボは、25年前と比べたらガラリと様相が変わってしまった。そうでないとしても彼らが、少なくともハンドリングに関して、アジリティやファンな要素で多少なりとも味付けした、若者向けのスモールカーを送り出すとは予想しなかったのではないだろうか。

とはいうものの、EX30はそこを売りにするクルマではない。ステアリングはかなり軽くてフィールはダイレクトでなく、ペースはほどほどだ。小さなクルマに時折見られる素早くエネルギッシュなノーズの動きを装うことはなく、ハンドリングは常に直観的だ。

シングルモーターのEX30は矛盾を抱えている。速いのだがとくに俊敏なわけではない。運転は明快だが、使い方は直感的でない。安全性を重視しながら、集中力を妨げるような仕立てになっている。
シングルモーターのEX30は矛盾を抱えている。速いのだがとくに俊敏なわけではない。運転は明快だが、使い方は直感的でない。安全性を重視しながら、集中力を妨げるような仕立てになっている。

しかしそうであっても、気合を入れると走りには明らかに鋭さの兆候が現れる。横グリップのレベルと旋回時のボディコントロールは、クロスオーバーモデルとしてはかなりいい。ターンインは安定しているがロールに耐える構えができていて、四輪の接地面を駆使してタイトな走行ラインを断固捉え続ける。そのとき、前輪が軽くなるフィールはまったくない。リアモーターながら、前後重量配分は48:52というバランスも効いているのだろう。

安全策として常にアンダーステア傾向とすることはなく、安全性重視の安定性を主張するためにスタビリティコントロールの介入を強めることもしていない。

特別に走りが楽しいクルマではない。活発さに欠けるところがあり、穏やかさが勝っている。ステアリングやシャシーのレスポンスは、クプラボーンのようなドライバーを夢中にさせてくれるクルマに後れをとっている。それでも、まずまず気持ちいいドライビングを味わえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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