トレンドはこれからも「SUV一辺倒」なのか? 欧州市場に見る “風向き” の変化

公開 : 2024.05.07 18:05

大きくて背の高いSUVモデルが注目を集めているが、欧州市場ではもっと小型で安価なモデルも求められる。欧州フォードの製品戦略から「風向き」の変化が見えてきた。

製品ラインナップ「SUVばかり」にはならない?

消費者トレンドの変化や電動化におけるメリットなど、さまざまな理由からSUVモデルが増え続けている。その傍ら、メーカーによってはハッチバックやクーペ、セダンなどのラインナップを縮小しているところもある。

特に、EVの普及を図る欧州ではその傾向が顕著だ。例えばフォードの欧州部門は、SUVを拡大する一方でBセグメント・ハッチバックのフィエスタの生産を終了し、2025年にはCセグメントのフォーカスも廃止予定だ。

欧州フォードはフォーカス(左)とフィエスタ(右)をラインナップから外すが……。
欧州フォードはフォーカス(左)とフィエスタ(右)をラインナップから外すが……。

EVでは、大容量バッテリーを搭載するスペースのゆとりと、比較的高価でも売れることなどからSUVモデルが主流となっている。フォードは2025年末までに、エクスプローラー、カプリ、プーマGen-E、そしてマスタング・マッハE(改良新型)の4車種の電動SUVを発売する計画だ。

つまり、フォードの欧州向けラインナップでは、SUV以外の乗用車は2ドア・クーペのマスタングのみとなる(商用車を除く)。

将来的にSUV以外のモデルを投入する余地はあるのだろうか。フォードの欧州部門責任者であるマーティン・サンダー氏は「間違いなくあります」と答える。

フォードは今後もSUVを望まない顧客にも対応していくという。

「ここ数年、フォードを成功に導いてきたのは確かな品質やコストパフォーマンスです。この価値を捨てるつもりはありません。これらは、フォードが長年グローバルに持ち続けてきた基本的な価値観です」

「新しいレベルのデザイン、インテリア、性能、装備をお見せできるでしょう」

サンダー氏は新型エクスプローラーのデザインと質感を例に挙げ、「これまでのフォードとは異なるレベル」であり、「これこそ当ブランドにふさわしいもの」だと述べた。

新型エクスプローラーはフォルクスワーゲン・グループとの提携により開発されたEVで、同グループのMEBプラットフォームをベースとしている。

理論的には、フォードはフォルクスワーゲンのプラットフォームを活用して、フィエスタのようなコンパクトな都市型EVを開発することも可能だ。

EVの低価格化が求められる昨今、こうした小型・廉価なエントリーモデルの重要性は高まっている。フォルクスワーゲンやルノーも小型EVに力を入れる。

フォードは最近、目標価格2万5000ドル(約380万円)のエントリーモデルのEVを開発するプロジェクトが進行中であることを明らかにした。今のところ「スカンク・ワークス」と表現されていることから、プロジェクトチームの規模は比較的小規模なようだ。

しかし、プロジェクトは高価格帯の高級EVに対する需要が薄れていることを踏まえて2年前に始動し、元テスラのエンジニアでモデルY開発にも携わったアラン・クラーク氏が率いているという。

このモデルの詳細や導入時期については明らかではないが、少なくともフォードの製品戦略においては「SUV一辺倒」というわけではなさそうだ。今後も風向きに注視したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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