新型ミニ・クーパー SEへ試乗 プレミアムでも「個性」は希釈? 本当の4代目はEVのみ

公開 : 2024.05.09 19:05

軽くない車重 機敏に向きを変えていける

ダッシュボード中央に据えられる、OLEDの丸いタッチモニターには、メーターとカーナビ、オーディオ、トリップコンピューターなどを統合。車載機能の殆どを司る。エアコンは、熱効率の良いヒートポンプ式が標準だ。

ショートカットが用意されたメニューは操作しやすく、グラフィックは高精細。それでも、ドライバーの正面にスピードメーターが欲しいことは間違いない。ロータリーコントローラーなどがあれば、一層ベターだ。

ミニ・クーパー SE クラシック(欧州仕様)
ミニ・クーパー SE クラシック(欧州仕様)

運転席からの視界は広いものの、バックミラーの位置が低すぎ、斜め前方に小さくない死角がある。これはトヨタヤリスも同様だが、前方視界の確保は、もっと配慮されるべきだと思う。

さて、クーパー SEの駆動用モーターは、反応良くパワフル。最近は一層エネルギッシュなバッテリーEVも少なくないから、活発な走りを強みにできるほどではないけれど。

ドライブモードによって、走行時の人工サウンドも変わる。1959年のオリジナルを模した4気筒エンジン風から、近未来的な響きのものまで、音色の変化も大きい。一部のユーザーは好むはず。エンジンを模した音は、ややうるさいかも。

車重は1605kgあり、一般道でも軽くないことを感じてしまう。49.2kWhのバッテリーと、それを支えるシャシー補強で、先代のミニ・エレクトリックより200kg以上重い。技術進歩を考えると、もう少し軽くできたのではないだろうか。

それでも、カーブが連続する区間での身のこなしは良好。ステアリングは鋭く反応し、機敏に向きを変えていける。旋回時の、横方向のグリップ力も高い。

特別な個性は少し薄まった でも競争力は高い

乗り心地は、より滑らかな吸収性が欲しい。高速道路では路面変化に対し、ソワソワと僅かに落ち着きが足りない様子。姿勢制御は、加減速時など前後方向の傾きが大きめ。路面へ、しなやかに追従しているような印象は薄い。

週末の長距離ドライブへ、積極的に出かけようという気にはなりにくいように思う。歴代のミニとは違って。

ミニ・クーパー SE クラシック(欧州仕様)
ミニ・クーパー SE クラシック(欧州仕様)

現実的な航続距離は、高速道路や一般道などを複合的に走らせて、約320kmという結果になった。速度域の低い都市部では距離が伸び、高速道路では短くなる。

急速充電能力は、クーパー SEで最大95kW。Sでは75kWへ低くなる。高速とは呼べないが、残量10%から80%までの補充は、30分も必要ない。

ミニだから、高性能な電動版JCWも登場するはず。とはいえ、今回試乗したクーパー SEも、運転を楽しみたいドライバーにとって有力な候補に加えられる。

従来どおり、ミニらしさは追求されている。外観や車内は高級感を増し、使いやすさと航続距離も増えている。しかし、運転して得られる充足感は先代を超えていない。着座位置は高く、車重の重さは隠せていない。ダイレクトさも、幾分弱められたようだ。

確かに、強みは違う部分へシフトした。クラス・リーダーではないかもしれない。それでも、プレミアムな電動ハッチバックとして、高い競争力を持つことは間違いないだろう。特別な個性が、若干希釈されたとしても。

◯:増えた航続距離 高級感を増し、広くなった車内 
△:軽くない駆動用バッテリー 先代ほど個性や魅力が濃くないスタイリング

ミニ・クーパー SE クラシック(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万4500ポンド(約662万円)
全長:3858mm
全幅:1756mm
全高:1460mm
最高速度:170km/h
0-100km/h加速:6.7秒
航続距離:392km
電費:6.6-7.0km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1605kg
パワートレイン:ハイブリッド同期他励電気モーター
駆動用バッテリー:49.2kWh(実容量)
急速充電能力:95kW
最高出力:218ps
最大トルク:33.5kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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