フェラーリSF90 XX スパイダーへ試乗 胸が打たれるほど「公道」で素敵 HVの総合1030馬力!
公開 : 2024.05.21 19:05
美しいインテリア ワインディングを快適に登れる
ステアリングは、ロックトゥロック2回転とクイック。しかし、812 スーパーファストより据わっている。安定感が凄い。
運転姿勢は理想的。サポート性が見事なカーボン製バケットシートは、ランバーサポートの調整などはできないものの、素晴らしく心地良い。人間工学的なデザインは、完璧とはいえない。それでも、ドライブモードと減衰力の変更は、運転中でも簡単だ。
レースハーネスはオプション。筆者は、公道前提のモデルには必要ないと思っている。身を乗り出して左右を確認するのは難しくなるし、助手席に誰も座っていない時は、カタカタとうるさい。
インテリアは美しい。トンネルに入ると、照明がキラキラ反射してロマンチック。イベント帰りのナイトドライブも、きっと楽しいだろう。旅行用のカバンは積めないから、数泊の旅行は難しいとしても。
スパイダーのカーボン製ルーフは、素早く後方へ折りたたまれる。オープン時のボディ剛性はクーペより落ちるようで、強い入力が加わると稀にバックミラーが震える。
クーペと剛性感が違わないのは、マクラーレンのカーボンタブ・シャシーくらいのようだ。とはいえ、ソリッド感は相当に高い。実環境では、殆ど気付くことはないだろう。
シャシーは、シリアスさとコンフォートさとの、絶妙なバランスが突かれている。XXの名を背負っていても、599 GTOほど圧倒されることはない。1000馬力以上のミドシップ・スーパーカーでも、ワインディングを快適に登っていける。
運転時間が長くなるほど、楽しいと思える
駆動用モーターだけで走るEVモードは、最大112km/hまで許容。静かで活発だ。エンジンが必要に応じて始動する、オートマティック・モード時は更に速い。
大きなパドルを弾き自らギアを選んでみたが、気付いたら3000rpm程度でシフトアップしていた。イタリアの峠道では、1030psも引き出す必要がないからだ。
8000rpmまで引っ張れば、怒涛の勢い。うかつにフルスロットルを与えると、ワープするよう。緊張感も瞬時に上昇する。
以前にサーキットでクーペのSF90 XXを試乗した同僚のマット・ソーンダースは、コーナーの侵入後に軽くブレーキングすることで、旋回性を高められると記していた。これは、公道を走るスパイダーでも変わらないようだ。
早めにブレーキングを済ませ、旋回途中から加速を始めると、フロントが外へ引っ張られるような挙動が現れる。ブレーキング・ポイントを深めに取った方が、ラインを辿りやすい。従来のフェラーリとは、ちょっと異なる特性といえる。
ステアリングの感触は精彩。バケットシートのサポート性は抜群。エンジン音は、市販車では最高。変速レスポンスも最速。電気モーターのアシストは、間髪入れず鋭い。
運転する時間が長くなるほど、SF90 XX スパイダーが楽しいと思えてくる。ダウンフォースの効果は、体感できなかったが。
追加された「XX」のサブネームは、本来の意味ではなく、肩書きとして与えられたのかもしれない。しかし、仕上がりは胸が打たれるほど素晴らしい。あるべき完成度へ、到達したように感じた。
フェラーリSF90 XX スパイダー(欧州仕様)のスペック
英国価格:73万ポンド(約1億4016万円)
全長:4704mm
全幅:1973mm
全高:1191mm
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:2.3秒
燃費:13.9km/L
CO2排出量:178g/km
車両重量:1660kg
パワートレイン:V型8気筒3990ccツイン・ターボチャージャー+トリプル電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:7.9kWh
最高出力:1030ps/7900rpm
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)