この電動化なら炎上せず? エヴァラティ・メルセデス・ベンツSL W113へ試乗 60年代に寄せた走り

公開 : 2024.05.23 19:05  更新 : 2024.05.24 08:15

あえて、本来の280 SLに近い動力性能

今回筆者が試乗したのは、私有地に限られた。速度はせいぜい40km/h程度までしか出せなかったが、エネルギッシュでスムーズに加速していく。

しかし、バッテリーEVとしてはパワーは控えめ。エヴァラティ社の技術なら、もっと鋭く加速させることも可能だろう。しかし、同社はそれを選ばない。1960年代の280 SLに近い動力性能へ、あえて留めている。慎重な判断のうえで。

エヴァラティ・メルセデス・ベンツSL W113(欧州仕様)
エヴァラティ・メルセデス・ベンツSL W113(欧州仕様)

ステアリングの反応も、鋭くはない。大径で細いリムを回すと、ゆったり優しく向きを変えていく。SLは、地中海の海岸線を優雅に流すことを前提にしている。

もちろん静か。駆動用モーターが僅かにうなり、タイヤの転がり音が響く程度。穏やかなSLの雰囲気を、引き立てている。

エヴァラティ社が手掛けた911には、オプションで人工音を聞かせるサウンドジェネレーターが用意されている。しかし、これまでに指定された例は1台だとか。マニュアル・トランスミッションを残すことも考えていないそうだ。

「多くの依頼者は、自分のクルマのエンジンを残したいとは考えていません。過去には興味がないのです。未来を見たいのでしょうね」

同社は、本来の内燃エンジンへ載せ替えることも可能にしている。「弊社の仕事では、オリジナルの構造へダメージを与えない、可逆性を重視しています。それでも、実際にエンジンへ戻したいと考える人は少ないようです」

ランボルギーニLM002も電動化予定

ちなみに、エヴァラティ社は複数のパワートレイン・レイアウトへ対応している。フロントエンジンだけでなく、リアエンジンの後輪駆動も、ミドシップも対応可能。四輪駆動でも電動化できる。

最近は、中東に住む富裕層から、ランボルギーニLM002を電動化して欲しいと連絡をもらったそうだ。彼らは、オリジナルのランドローバー・シリーズ2Aを、すでに高性能なバッテリーEVへ変換済みだ。

エヴァラティ・メルセデス・ベンツSL W113(欧州仕様)
エヴァラティ・メルセデス・ベンツSL W113(欧州仕様)

少し試乗させてもらったが、筆者が過去に運転したランドローバー・ディフェンダーの中で、間違いなく最速だった。ブレーキやサスペンション、ステアリングがアップグレードされ、上昇した速度域へ対応していた。

執筆:スティーブン・ドビー(Stephen Dobie)
撮影:マット・ヴォスパー(Matt Vosper)

エヴァラティ・メルセデス・ベンツSL W113(英国仕様)のスペック

英国価格:39万6000ポンド(約7603万円/ベース車両別)
全長:4335mm
全幅:1760mm
全高:1305mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:6.8秒(予想)
航続距離:321km
電費:−km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1500kg(予想)
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:62.0kWh(実容量)
急速充電能力:−kW
最高出力:304ps
最大トルク:30.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事