「一生モノ」の真面目なサルーン ボルボ144 E 走れる状態では英国唯一 人気小説家の愛車(2)

公開 : 2024.05.26 17:46

細めのトルク、ショートなギアにアンダーステア

ドアは大きく開き、乗り降りしやすい。ドアを閉めれば、ピタリと収まる。運転席からの視界は、360度良好。フロントシートの掛け心地は快適で、腰を支えるランバーサポートは調整できる。北欧のクルマだから、ヒーターも良く効く。

四角いボディは、四隅の感覚を掴みやすい。小回りも利くようだ。

ボルボ144 E(1974年式/英国仕様)
ボルボ144 E(1974年式/英国仕様)

動的な魅力は、大きくないかもしれない。ボルボ・ファンは、4気筒エンジンを味わい深いユニットだと評価すると思うが、充分なパワーを引き出すと、ノイズは大きく回転が荒っぽい。トルクは太くなく、正直なところ低速域では扱いにくい。

現代の交通へ合わせて走らせようとすると、積極的にギアを選び続ける必要がある。シフトレバーの感触は、かなりリモート的。手応えは重いものの、ギアの回転数を調整するシンクロメッシュは有能で、キビキビと変速できる。

それでも、レシオはショート。高速道路では、オーバードライブが欲しくなる。クラッチペダルを踏むには力がいるが、ブレーキは強力。もう少し低い回転域を保てれば、安定して長距離を走れる、クルーザーにはなるだろう。

連続するカーブでは、フロントノーズがゆったり向きを変える。ステアリングホイールは重く、曲がりたがるタイプのクルマではない。高めの速度域ではタイヤが簡単に鳴き、アンダーステアへ徐々に転じる。

一生モノのクルマ 過去へ目を向けてみる

もっとも、半世紀前のクルマとして、これらの特徴は当然といえる。144 Eはドライバーズカーとしてではなく、忠実にオーナーへ仕えるクルマとして、堅実さが重視されていた。スポーツサルーンのように扱おうとする側が、間違っている。

以前から欧州では、特にスウェーデンでは安全性や耐久性、信頼性が優先されてきた。半世紀が過ぎた今、この善良なボルボの魅力は再び強まっているようだ。電子装備や高級感は最小限でも、一生モノのクルマだ。

ボルボ144 E(1974年式/英国仕様)
ボルボ144 E(1974年式/英国仕様)

バッテリーEVやSUVも悪くないが、140シリーズのようなクルマはいかがだろう。クラシックカーの弱点は、最新技術でアップデートできる。一度の充電で走れる距離を気にする必要はないし、製造時に排出されるCO2も削減できる。

修理は簡単で、安全性は低くない。耐久性は折り紙付き。運転する喜びを失ことを憂うなら、過去へ目を向けてみるのも悪くない。

協力:ボルボ・カーズUK

ボルボ144 E(1972〜1974年/英国仕様)のスペック

英国価格:2490ポンド(新車時)/1万ポンド(約192万円/現在)以下
生産数:52万3808台(144合計)
全長:4775mm
全幅:1715mm
全高:1461mm
最高速度:160km/h
0-97km/h加速:12.5秒
燃費:7.8-9.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1234kg
パワートレイン:直列4気筒1986cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:116ps/6000rpm
最大トルク:16.0kg-m/3500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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