最高峰の「エンターテイナー」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 大アップデートで665psへ

公開 : 2024.05.15 19:05  更新 : 2024.05.22 13:48

アストン マーティン・ヴァンテージが大アップデート AMGの4.0L V8は665psへ しなやかな乗り心地 高速域での秀抜な安定感 公道との相性が優れる予想しやすい積極性 英編集部が評価

AMG由来の4.0L V8ツインターボは665psへ

最新のアストン マーティンヴァンテージは、510psから665psへ増強。包括的なアップデートを受け、大幅に能力が引き上げられた。英国価格は16万5000ポンド(約3168万円)から。納車は、2024年5月に始まっている。

スタイリングは、僅かに勢いを増した。2005年に発売された、V8ヴァンテージのDNAも受け継いでいる。同じ家系にあることは、誰の目にも明らかだ。

アストン マーティン・ヴァンテージ(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ(欧州仕様)

全幅は1981mmとワイド。アルミニウムの押出材と鋳造材を用いたシャシーは、最新のDB12とベースを共有する。グランドツアラーではなくスポーツカーとして、ホイールベースは2692mmへ短縮され、2シーターで全長も4496mmと短い。

現在のアストン マーティンの量産車では、最も走りを追求したモデルといえる。だが、
動的能力の開発を率いたサイモン・ニュートン氏は、サーキットカーではなく、ロードカーだと強調する。つまり、ハードコア仕様の登場も考えられる。

シャシーは、ねじり剛性が高められた。フロントの縦方向の部材は強固に接合され、前後に薄いパネルを装備。フロントサスペンション上部のブレースは、軽量・高剛性化。リアにも、荷室を横断する形でブレースバーが追加された。

エンジンは、メルセデスAMG由来の4.0L V8ツインターボ。ZF社製の8速ATが組まれ、ファイナルレシオは5%ショートに。後輪駆動で、電子制御のリミテッドスリップ・デフを備える。

パワーステアリングは電動。精度を高めるため、ステアリングコラムの固定部分は、振動やノイズを吸収するカップリングが省かれた。

ドライバーの心を聴覚的にも深く刺激

ダブルウィッシュボーン・サスペンションは、コイルスプリングにビルシュタイン社製アダプティブダンパーの組み合わせ。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツS5で、サイズは前が275/35 R21、後ろが325/30 R21と太い。

インテリアは一新。DB12にも実装される、タッチモニターとソフトウエアが備わる。とはいえエアコンやオーディオには、実際に押せるハードボタンを維持。メーター用モニターには、高精細なグラフィックが描かれる。

アストン マーティン・ヴァンテージ(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ(欧州仕様)

シフトインジケーターが小さすぎると指摘したら、間もなく修正予定だという。既知の課題として、理解しているそうだ。

内装素材は高品質。ステッチも美しい。ドアハンドルが少し変形するようだったが、これもいずれ改善されるだろう。

運転姿勢は適正。シートは快適でサポート性が高い。着座位置は低いものの、ウインドウの下端が高く、車幅感覚は掴みにくい。少し高めに、座面を調整するのが良いようだ。ペダルの間隔は広く、ステアリングホイールの調整域は大きい。

665psを公道で解き放つことは難しい。V8ツインターボは7000rpmまで回転し、6000rpmで最高出力を生み出す。2000rpmから81.4kg-mの最大トルクが放たれ、圧巻の中間加速を披露する。

サウンドも、従来以上に勇ましく聞き惚れる。量産車の中で、最も美しい咆哮を奏でる1台だといっていい。近年では数少ない、ドライバーの心を聴覚的にも深く刺激するロードカーだ。ちなみに、燃費は8.2km/Lがうたわれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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