最高峰の「エンターテイナー」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 大アップデートで665psへ

公開 : 2024.05.15 19:05  更新 : 2024.05.22 13:48

しなやかな乗り心地 秀抜な高速域での安定感

サーキットでは、7000rpmという低めのレブリミットで、小まめな変速が必要。ファイナル比が短く、レッドゾーンで頭打ちにもなりがち。1L当たり166psの高出力ユニットだから、低回転域にはターボラグもある。

それでも適度に積極的に、滑らかに疾走できるスタイルが好ましかった。1段上のギアを選び、回転を引っ張りすぎず、豊かなトルクを活かしながら。

アストン マーティン・ヴァンテージ(欧州仕様)
アストン マーティンヴァンテージ(欧州仕様)

ブレーキは標準がスチール製ディスクで、直径は前が400mm、後ろが360mm。ペダルの踏み応えはリニアで、制動力と同時に抵抗感も増していく。

オプションのカーボンセラミック製ディスクを選ぶと、4枚で27kgも軽量化できる。ニュートンの話では、乗り心地やブレーキの感触は同等ながら、路面温度への適応力が広がるそうだ。

乗り心地は、全般的にしなやか。平滑な路面では、若干シリアスさが足りないかもしれない。スポーツ・モードは特に、未舗装路も許容するだろう。

そのかわり、細かな入力も大きめのうねりも巧みに吸収し、非常に快適。敏捷性は高く、落ち着いた姿勢制御で、乱れ気味の舗装でも不安なくコーナリングできる。

アストン マーティンは後輪操舵システムを試したそうだが、期待通りの結果を得られないと判断。そのかわり、ロックトゥロック2.27回転のクイックなレシオを与えた。

直接比較してみたいところながら、フェラーリ・ローマより切り始めの反応はややスロー。前後の重量配分は50:50で、フロントエンジン・リアドライブのレイアウトと相乗し、高速域での安定感は秀抜だ。

予想しやすい積極性 公道との相性が優れる

ダンパーのモードを問わず、操縦性は自然。ステアリングホイールには、望まないキックバックが排除されつつ、少量ながら確かなフィードバックが伝わってくる。

ドライブモードは、ウェットからトラック(サーキット)までの5段階。ステアリングは2段階、ダンパーは3段階から切り替わる。試乗したスペインのモンテブランコ・サーキットは、アスファルトが平滑とはいえずスポーツ+が適していた。

アストン マーティン・ヴァンテージ(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ(欧州仕様)

スタビリティ・コントロールは、ボタンの長押しでオフに。トラクション・コントロールは9段階で、1はほぼスリップなし。8は、スモークたっぷりのドリフトを許容する。9では完全にオフになる。

ある程度のアクセルオンまでは、定常的なアンダーステア。侵入時にブレーキを引きずりながら、フロントノーズをラインに乗せていくのが望ましい。ステアリングは負荷に応じて重みが増し、リアの流動性が高まる。

正しく扱えば、イン側の縁石の衝撃をなだめながらスムーズに旋回。コーナー途中からテールスライドさせて脱出できる、予想しやすい積極性を備える。

ただし、ニュートンのロードカーだという主張どおり、公道との相性の方が優れる。充足感も高い。恐らく、サーキットをホームとするヴァンテージも追加されるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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