どれも「同じ」に見えるマクラーレン 新デザインで個性強化へ 次世代スーパーカーの姿は

公開 : 2024.05.15 18:05

経営再建を図るマクラーレンは、ブランド強化のため自動車のデザインを刷新しようとしている。英国流スーパーカーは今後どう変わっていくのか、チーフデザイナーに話を聞いた。

マクラーレンの未来、どう描く?

今年3月、英国の自動車メーカーであるマクラーレン・オートモーティブが今後のデザインの方向性を表明した。経営再建を図る中、未来のスーパーカーデザインはどのように形成されていくのだろうか。

マクラーレンのチーフ・デザイン・オフィサーであるトビアス・スールマン氏は、歴史からデザインのインスピレーションを得ているという。

マクラーレン・ソーラスGT
マクラーレン・ソーラスGT

スールマン氏は英ウォーキングにあるマクラーレン・テクノロジー・センターのメインアトリウムを指して、「毎日ランチを食べに行くとき、このブールバール(大通り)を歩きながらマクラーレンの歴史に思いを馳せます」と語る。

広大な敷地内には、ブルース・マクラーレンのM8Dカンナムレーサー、F1タイトルを獲得したアラン・プロストのMP4/2B、ランド・ノリスの現行型MCL38などのレーシングカーのほか、MP4-12C、スピードテール、エルバなどのロードカーが並んでいる。

デザインが担う重要な役割

いずれもマクラーレンの歴史や伝統を思い起こさせるものであり、スールマン氏はそこから未来の新たな方向性を描こうとしている。

「わたしのチームには、ここを歩いてさまざまなディテールを見つけ、それに対する新しい解釈を展開するよう求めています。このブールバールを見ると、インスピレーションが湧いてきて、いろいろな可能性に気づくんです」

英ウォーキングのマクラーレン本社
英ウォーキングのマクラーレン本社

ドイツ人のスールマン氏はこれまでフォルクスワーゲンブガッティアストン マーティンでキャリアを築いてきた。2021年にマクラーレン・ソーラスGTを手掛けた後、他社へ移籍したが、昨年9月にベントレーのエクステリアデザイン責任者の座からマクラーレンに呼び戻された。

自身のキャリアを振り返り、「大手メーカーから中小企業まで、多くの企業で働いてきました。マクラーレンはわたしの理想の会社です」と語る。

マクラーレン・グループは3月、財政問題を経て、バーレーンの政府系ファンドによって買収された。現在は再編の最中にあり、フェラーリ出身のマイケル・ライターズ氏を自動車部門のCEOに据え、SUVやEVを含むラインナップ拡大を計画中だ。

そうした重要な時期にあって、スールマン氏は新しいデザイン言語を開発している。

どれも「似ている」一面も

その主な特徴は、ロングノーズ、ショートリアの前傾したサイドビュー「パフォーマンス・ライン」と、水平基調の要素を持つリアビュー「オープン・バックエンド」だ。マクラーレンのレーシングカーとロードカーに共通する特徴に基づいて開発されたという。

「マクラーレンのルーツはレースにあり、すべてがレースの一部なのです。未来を理解し、形作るためには、ブランドの全体像とDNAに目を向けなければなりません」

マクラーレンのチーフ・デザイン・オフィサー、トビアス・スールマン氏
マクラーレンのチーフ・デザイン・オフィサー、トビアス・スールマン氏

「人々はレースの伝統があるからこそ、マクラーレンを買い、愛してくれるのです。マクラーレンは自動車会社を立ち上げてからレーシングチームを立ち上げたのではありません。その逆です」

マクラーレンのレースの歴史は1963年まで遡るが、自動車部門はわずか14年の歴史しかない。それでも、強力なアイデンティティを確立している。

「マクラーレンを見れば、誰もがマクラーレンだとわかるでしょう」

しかし、それは多くのモデルのベース部分が共有されているため、どれも少し似ているという一面もある。ただそれも、新しいデザイン言語によって将来的には変わっていくだろう、とスールマン氏は約束する。

「モデルごとに異なるキャラクターと異なるアイデンティティを作り出し、モデル同士をより強く分離することが狙いです。人々はマクラーレンを認識するだけでなく、そのモデルもわかるようになるでしょう」

記事に関わった人々

  • ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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