誇り高き「重厚感」 アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(2) 魅力の中心がV8エンジン 好調のトリガー

公開 : 2024.06.01 17:46

魅力の中心にある6.3L V8エンジン

ステアリングホイールとクラッチペダルは重い。5速MTのシフトレバーは、動きが渋い。6.3L V8エンジンが、前方で威圧的に唸る。ステアリングレシオはややスロー。低回転域から太いトルクがみなぎる。

標準の5.3Lエンジンを積んだヴィラージュは、充足感の高いグランドツアラーだった。対してヴィラージュ 6.3のアクセルペダルを踏み込むと、眠った獅子が目覚めたように、怒涛の突進が始まる。瞬間的に、巨大なトルクが路面へ伝えられる。

アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(1992〜1993年/英国仕様)
アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(1992〜1993年/英国仕様)

ボンネットは、加速時に明らかに斜め上を向く。3速で引っ張れば190km/hを超えるが、どんなコーナーからの加速も短時間にこなせる、粘り強さもある。アウトバーンでは、4速に入れたまま地平線の彼方まで疾走できるだろう。

ホイールベースは2610mm。小回りは余り利かず、アンチロールバーは強化されているものの、ボディロールは大きめ。そのかわり、乗り心地はしなやかで優しい。

シャシーバランスの高さは、驚くほど。速度域が高まるにつれ、ステアリングホイールは徐々に軽くなり、敏捷性が増す。意欲的にヴィラージュ 6.3は回頭していく。繊細に重み付けされたアクセルペダルを傾ければ、痛快なレスポンスでカーブを脱出できる。

6500rpmのレブリミットまで、エンジンサウンドはクレッシェンドし続ける。深く厚みのあるコーラスがドラマチック。プロトタイプ・レーサー譲りのV8エンジンが、魅力の中心にあることは明らかだ。

ニューポート・パグネルによる30年前の賜物

車内空間には、多少の妥協はある。グランドツアラーとしても、スーパーカーとしても、中途半端かもしれない。そんな事を、特別なパワーユニットが忘れさせる。

確かに、DB7の方が広く受け入れられた。ヴァンキッシュなら、より多くの利益を得ることができた。現在のラインナップは、しっかり市場にマッチしている。それでも、いかにも英国車らしいヴィラージュ 6.3の魅力が霞むことはない。

アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(1992〜1993年/英国仕様)
アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(1992〜1993年/英国仕様)

ニューポート・パグネルに拠点を残すアストン・マーティン・ワークスで、この貴重な例は今も大切に維持されている。ブランドを守りたいと考えた人々、必死にクルマを作り続けた人々による、30年前の賜物といえるだろう。

協力:アストン マーティン・ワークス

アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(1992〜1993年/英国仕様)のスペック

英国価格:20万ポンド(新車時)/12万ポンド(約2304万円/現在)以下
生産数:約60台
全長:4737mm
全幅:1854mm
全高:1321mm
最高速度:280km/h
0-97km/h加速:5.1秒
燃費:5.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1969kg
パワートレイン:V型8気筒6347cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:507ps/6000rpm
最大トルク:66.2kg-m/5800rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3の前後関係

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