「ゲレンデ」にも電気の時代が来た! メルセデス・ベンツGクラス G 580へ試乗 破壊的に速い4モーター

公開 : 2024.05.16 19:05

破壊的に速いクワッドモーター トルク118.5kg-m

電動のGクラスは、現在のところG 580の1択。AMG仕様は予定にないものの、クワッドモーターでの最高出力は587ps、最大トルクは118.5kg-mもあるから、必要ないだろう。各147psのモーターが1本のタイヤを受け持ち、前後に2基づつ別れて載っている。

0-100km/h加速は4.7秒。高性能なバッテリーEVとしては驚く数字ではないかもしれないが、実際に味わってみると破壊的に速い。

メルセデス・ベンツ Gクラス G 580 EQテクノロジー(欧州仕様)
メルセデス・ベンツ Gクラス G 580 EQテクノロジー(欧州仕様)

ブレーキの効きは至って滑らか。ペダルの感触は一貫性が高く、回生ブレーキの強さはステアリングホイール裏のパドルで調整できる。

Gロアと呼ばれる、人工のエンジン音はかなりリアル。iXの宇宙船のようなものとは異なり、AMG仕様を穏やかにしたような響きで、知らない人が乗ったらガソリンエンジンで走っていると勘違いしそうだ。

バッテリーEVになったことで車重は更に増え、3085kg。Gクラスは、以前からトラックのように重いと感じてきたが、実際の数字もそれに届いた。

ステアリングの反応や感触などから、その重さが伝わってくる。乗り心地もどっしり。それでも、3tもあるようには思えないけれど。

低速域では、凹凸の目立つ路面での揺れが大きめ。速度抑止用のスピードバンプでは、強めの衝撃が届くことも。速度が増すほど乗り心地は滑らかになるが、ランドローバーレンジローバーには及ばない。レザーシートを通じて、揺れが伝わってくる。

四角いボディが故に、風切り音も大きめ。静かな電動パワートレインのおかげで、余計に目立つようだ。

悪路性能は内燃エンジン版より優れる

パワステが付いているから、ステアリングホイール自体は軽く回せる。しかしレシオはスローで、タイトなS字カーブなどを通過すると、腕を沢山動かすことになる。ワインディングを速めに下る場面などでは、疲れそうだ。

悪路性能に関して、メルセデス・ベンツの技術者は、内燃エンジン版より優れていると話す。トルクの太い独立した4基のモーターが、悪路での走りを緻密にサポートするためだ。渡河水深は850mmとされ、従来より150mm深い川も横断できる。

メルセデス・ベンツ Gクラス G 580 EQテクノロジー(欧州仕様)
メルセデス・ベンツ Gクラス G 580 EQテクノロジー(欧州仕様)

特徴となる技術の1つが、Gステアリング。旋回時に内側のタイヤを減速させ、外側のタイヤへパワーをかけることで小回りを利かせる、トルクベクタリングの1つ。これは、滑りやすい路面でも効果を発揮する。

またGターンは、前後のモーターを逆回転させることで、その場でくるりと回転する機能。中国のヤンワンU8も同等の機能を備えるが、動きが機敏で楽しかった。これは、オフロード以外での利用が制限されている。

これらの機能を抜きにして、基本としての走破性は非常に高い。今回の試乗ではAMG G 63にも試乗したが、同じオフロードコースをより簡単に走破してみせた。特に特別な技術は必要なく、ローレンジ・モードに入れるだけで問題なしだ。

ちなみにローレンジ・モードでは、仮想のデフロックが有効になる。とはいえ、オーナーがその違いに気付くのは難しいかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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