機敏で運転が楽しい! スズキ・スイフト 快適で上質なファミリーカー ルノー・ルーテシア 日仏2台比較(2)

公開 : 2024.05.25 09:46

クロスオーバー全盛期に、世代交代された期待のスズキ・スイフト クラストップの実力を備えるルノー・ルーテシア 小さなハッチバックの普遍的な魅力 英編集部が2台を比較試乗

スイフトの洗練性は向上 機敏な身のこなし

走り出せば、スズキスイフトの引き上げられた洗練性に感心する。新しい防音材と肉厚なカーペット、油圧エンジンマウントなどを採用し、ルノー・クリオ(ルーテシア)に劣らずスムーズだ。

2台とも、高速域では風切り音が大きめに聞こえる。しかし、驚くほど穏やかな気持ちで高速道路をこなせる。

ブルーのスズキ・スイフト 1.2マイルド・ハイブリッド・ウルトラと、オレンジのノー・クリオ(ルーテシア) TCe 90 エボリューション
ブルーのスズキ・スイフト 1.2マイルド・ハイブリッド・ウルトラと、オレンジのノー・クリオ(ルーテシア) TCe 90 エボリューション

スイフトは5速MT、ルーテシアは6速MTだが、トップギアのレシオは燃費重視でロング。急な坂道は例外だが、頻繁なシフトダウンは必要ないほどトルクが太い。市街地を越えて、遠くを目指そうという気になる余裕がある。

乗り心地では、フランス車のルーテシアに一日の長がある。サスペンションはストロークが長くしなやかに動き、うねるような区間でも、アスファルトが剥がれた穴にも、見事に対応。低いスピードでも快適といっていい。

スイフトはやや硬めながら、路面へ落ち着いて追従。舗装のつぎはぎの多い市街地では、やや落ち着きが足りないように感じた。そのかわり、郊外の道を飛ばしたり、コーナーを積極的に駆け抜ける場面でキラリと光る。

ステアリングは正確で、重み付けも丁度いい。シャシーの四隅にタイヤがレイアウトされたプロポーションと、1tを切る軽い車重も相まって、ルーテシアの比較にならないほど機敏に身をこなす。

走りを輝かせる1.2L 3気筒エンジン

カーブへ突っ込めば、フロントタイヤは粘るようにラインへしがみつき、リアアクスルが横方向の負荷を適度に受け止め、ドライバーを中心に旋回。アクセルペダルを緩めれば、ラインが内側へ絞られていく挙動も気持ちイイ。

運転する楽しさを、スイフトはしっかり宿している。乗り込む度に、気が散る運転支援システムをオフにする手間を忘れさせるほど。もっともこれは、欧州の安全規制へ対応させた結果ではあるのだが。

スズキ・スイフト 1.2マイルド・ハイブリッド・ウルトラ(英国仕様)
スズキ・スイフト 1.2マイルド・ハイブリッド・ウルトラ(英国仕様)

さらにこの走りを輝かせるのが、宝石と称したくなるようなスズキの1.2L 3気筒エンジン。自然吸気で最高出力は82psと小さいにも関わらず、スターター・ジェネレーターが低回転域でのトルクを加算し、小気味良く走れる。

回転上昇は意欲的で、サウンドも好ましい。キビキビとシフトレバーを動かし、限られたパワーを引き出すという面白さもある。

もちろん、ルーテシアも運転は楽しい。より落ち着いたマナーで、大人な印象を伴う。優しい乗り心地と、操縦性がバランスしている。だが、スイフトのように魅力的な快活さはない。6速MTのフィーリングは、僅かに曖昧だとも感じた。

ステアリングホイールはより軽めで、情報量は少なめ。サスペンションはスイフト以上のボディロールを許し、滑らかな路面以外では影響が出てしまう。不安なくカーブを駆け抜けていけるものの、正確性では及ばないだろう。

タイヤのグリップを活かしきれないのか、ルーテシアはアンダーステアも早め。トラクション・コントロールが介入し、意図せずブレーキがかかってしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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