「正常進化」で富裕層をさらに誘惑 メルセデス・ベンツGクラスへ試乗 3L直6ディーゼルがベストフィット

公開 : 2024.05.27 19:05

スイートスポットは3L直6ディーゼル

内装の品質は、同価格帯の高級SUVと比較すれば、僅かに期待を下回るかもしれない。とはいえ素材は上質で、多くのユーザーが気に留めることはないだろう。

カップホルダーには、温度調整機能を内蔵。ワイヤレス・スマートフォン充電パットも追加され、Gクラスとして初めて、キーレスゴーも実装された。

メルセデス・ベンツGクラス(欧州仕様)
メルセデス・ベンツGクラス(欧州仕様)

普段使いの足を引っ張りそうなのが、スペアタイヤを背負った横開きのテールゲート。狭い駐車場では、開くことができない。床面も高く、奥行き方向に浅く、4825mmの全長を考えれば容量も大きくはない。

確認はこのくらいにして、発進させてみよう。ISGのアシストを受け367psを発揮する、ディーゼルのG 450dがスイートスポット。豊かなトルクを簡単に引き出せ、高めの着座位置と相まって、Gクラスを謳歌できる。

追い越しを手早くこなせ、オフロードとの相性も優れる。現実的には3500rpm程度までしか回さないと思うが、ガソリンターボのG 500と変わらないくらい速い。

車格を考えれば燃費も良好で、カタログ値は10.6km/L。今回の試乗では、平均9.9km/Lが表示されていた。

G 500も不満なく速い。シフトパドルを弾けば、5000rpm以上まで豪快に吹け上がる。しかし、エンジンノイズには息苦しさも伴う。AMGのV8エンジンとは、小さくないギャップがある。

トランスミッションは、共通して9速オートマティック。発進時などに鋭い加速を求めると、変速に悩むことがあった。トルク特性が影響してか、G 450dよりG 500の方が変速の回数は増えるようだ。

感心するほどのグリップ力と文化的な乗り心地

操縦性は、近年のSUVのように乗用車ライクというわけではない。それでも、公道を不安感なく走り回れる。必要なら、目的地まで飛ばすことも問題ない。

ステアリングのレシオは適度にクイックで、反応は漸進的で予想しやすい。全幅が1931mmもあるボディを、正確に車線の中央へ留めておける。

メルセデス・ベンツGクラス(欧州仕様)
メルセデス・ベンツGクラス(欧州仕様)

カーブへ侵入すると、負荷の増加へ合わせて徐々にボディロールは増えていいくが、タイヤは狙ったラインを忠実に辿る。オン・オフの性能を両立させたSUVへ、グリップ力では並ぶだろう。

ロータリー交差点やショッピングモールの駐車場でも、充分機敏に扱える。サイズが大きく、小回りはさほど利かないけれど。

連続するコーナーを、小気味よく楽しむタイプではない。インテリアの豪奢な雰囲気を味わいながら、リラックスして運転した方がGクラスらしい。高めの視点から下界を見下ろすように、ゆったり移動するのが向いている。

車内は基本的に静かだが、高速道路の速度域では風切り音が耳につく。四角く大きいボディやドアミラーが、空気を切り裂くのだから仕方ない。

乗り心地は、リジットアクスルをリアに携えた大型オフローダーとしては、感心するほど文化的。レンジローバーほどではなくても、不整を優しくなだめる。強めの入力がタイヤへ加わると、その事実が伝わってくるが、快適性を大きく乱すほどではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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