【本田宗一郎DNAは息づいている】 型破りで破天荒なホンダの目標 EV化の裏には現実的な考えが
公開 : 2024.05.18 08:25
これから投入する電動化ラインナップ
また、三部社長は、上市を予定するEVの予定も説明した。
まず、2026年よりスタートする「ホンダ0シリーズ」は、2030年までに全世界で7モデルの投入を予定する。2026年に「SALOON」/「中型SUV」/「エントリーSUV」の3モデル。2027年に「3列シートの大型SUV」、2028年に「コンパクトSUV」、2029年に「スモールSUV」、そして2030年に「コンパクトセダン」だ。残念ながら2024年のCESで発表されたミニバンは予定にないようだ。
また、中国市場には2027年までに10モデルを投入。2035年には中国で販売するすべてをEVにする計画だという。
また、日本には、「ホンダ0シリーズ」とは別に小型EVラインナップを導入するという。2024年に「軽商用N-VAN e:」と、交換式バッテリー「モバイルパワーパック」を2個使用するEV「二輪車」が投入される。
2025年以降には「軽乗用EV」と「小型EV」が予定される。それ以外にも、2025年に「モバイルパワーパック」を使う「マイクロモビリティ」と「商用バン」も予定するという。
そんなEV投入の一方で、進化したハイブリッドも2026年に投入するという。現在の2モーター式ハイブリッド「e:HEV」をさらに軽量化・高効率化し、プラットフォームも刷新。この進化したハイブリッドをグローバルに数多く販売することで、着実な収益を確保するというのだ。
高い目標の裏にある現実的な考え
こうしたホンダの強気の戦略には、当然、お金がかかる。ホンダは、2030年度までに、約10兆円もの資源投入を予定するという。内訳は、ソフトウェア開発に2兆円、バッテリーのバリューチェーン実現に約2兆円、次世代工場などモノづくり関連に約6兆円だ。
そうした資金の元となるのが、二輪事業の販売台数拡大と、エンジン車/ハイブリッド車の販売になるという。会見後半の質疑応答では、三部社長から「ハイブリッドが稼ぐ力になっている」とのコメントも飛び出た。
ハイブリッドの進化により低コスト化が実現して、収益が出やすくなっているのだ。ホンダとしては「ハイブリッド車の生産のピークは2029年や2030年ごろになるのでは」という見通しを持っているという。つまり、当面の間、ホンダのビジネスの主力は、現在と変わらず、エンジン車とハイブリッドになるということだ。
ホンダの掲げる高い目標を耳にすると、「今すぐにでもホンダはエンジン車をやめるのか?」との思いが頭をよぎるが、それほど性急な計画ではないようだ。あくまでも本格的なEV普及期は2030年代であり、今は仕込みの時期。
本格的なEV普及期が到来した時に勝負できるよう、魅力的なEVづくりと、それを作るための体制と技術を準備していこうというのが、今回の説明会であったのだ。
ホンダの目標は、非常に高く、一見不可能にまで思える。しかし、その裏には非常に現実的な考えが存在していたのだ。人よりも遠くを見ているからこそ、荒唐無稽に感じられてしまう。これもまたホンダらしい部分なのかもしれない。