フォード・マスタング 史上初「4ドア仕様」導入か 派生モデル展開を示唆、しかしEV化は否定
公開 : 2024.05.22 18:05
米フォードは人気スポーツカー「マスタング」の派生モデルを幅広く展開していく姿勢を見せている。廉価バージョンやハイブリッドなどが考えられるが、バッテリーEVについては「ふさわしくない」とした。
「フル電動のマスタングは決して作らない」
米国の自動車メーカーであるフォードは、60年の歴史を持つスポーツカー「マスタング」の新シリーズの発売を検討している。史上初の4ドアモデルなど複数のモデルが投入される可能性がある。
マスタングは1964年に発売された2ドア・クーペで、米国を代表するクルマの1つ。最新型は第7世代にあたり、2.3L直4ターボエンジンまたは5.0L V8エンジンを搭載している。
先ごろ英国で開催された自動車イベント「グッドウッド・メンバーズ・ミーティング」で、最高経営責任者(CEO)のジム・ファーリー氏は、新しい派生モデルもマスタングらしい「性能と姿勢」を備えていなければファンに受け入れられないだろうと発言した。
「フォードはマスタングでないマスタングを作ることはありません。例えば、2列シートの小型SUVにマスタングのバッジを貼ることはないでしょう。しかし、4ドアなど、新しいボディフォームを作ることはできないでしょうか? オリジナルの性能と姿勢をすべて備えている限り、わたしはできると信じています」
手の届きやすい低価格モデルや、高級・高性能モデルの開発を行うようだ。ファーリー氏はポルシェの名を例に挙げ、次のように語った。
「ポルシェは過去20年間、派生モデルを賢く生み出してきました。しかし、彼らと同じような方法をとりたいとは思いません。フォードは、彼らにアメリカンスタイルを見せてやりたいのです」
コストを抑えながら性能を向上させるため、軽量化の開発プログラムがすでに進行中だ。
昨年、最高出力800psを発生するサーキット特化型の高性能モデルとして「マスタングGTD」が発表されたが、ファーリー氏は「GTDにとどまるつもりはない」とし、「人々を驚かせるような派生モデルを作り続ける必要がある」と意欲を見せた。
伝統を守るため、フォードは「神と政治家が許す限り」V8モデルを作り続けるという。しかし、CO2排出量削減と性能向上のために、将来的にハイブリッドを採用する可能性が高い。
「テストを重ねてきましたが、部分的な電動パワートレインはパフォーマンス・ドライバーに適していると確信しています。しかし、1つだけお約束できるのは、決してフル電動のマスタングを作らないということです」
マスタングと同じ名前を採用しつつも機械的には関連のないバッテリーEV「マスタング・マッハE」については、ファーリー氏は触れなかった。
「フォーミュラEの傘下チームやリマックのような企業を見ても、電動パワーはマスタングにふさわしいとは思えません。トランジット(商用車)の世界的な成功を見ればわかる通り、他のフォード車にとっては素晴らしい技術ですが、マスタングにとってはそうではありません」
2020年末にフォードのCEOに就任し、以来ラインナップの再構築を進めてきたファーリー氏は、マスタングの世界的な躍進を目指している。
「2015年頃、マスタングをグローバル展開すると決定したとき、右ハンドルへの対応など高価な変更を伴い、大きなリスクを冒しているように見えました。しかし、それは報われました。現在、スウェーデンやオーストラリアのような国々にも最大級のディーラーがあります。マスタングの未来はこれまでになく明るいと言えるでしょう」
画像 マスタングの「EV」はふさわしくないって……ではマッハEは?【フォード・マスタング・マッハEのラリー仕様を写真で見る】 全18枚