東欧の「ポルシェ」 刺激的だった廉価ブランドのRR シュコダ130/フェイバリット/120 ラピッド(1)

公開 : 2024.06.02 17:45

中身は純粋なラリーマシン

4気筒エンジンは、62psから97psへ増強。0-100km/h加速8秒以下のダッシュ力と、177km/hの最高速度が与えられた。

このマシンで1985年11月のRACラリーを戦ったのが、ドライバーのフィリップ・ヤング氏とコドライバーのデレク・ピックアップ氏によるペア。だが、クラッチ故障でリタイアに終わっている。

シュコダ130 LR(グループB/1985〜1989年/英国仕様)
シュコダ130 LR(グループB/1985〜1989年/英国仕様)

それでも、グループB仕様の130 LRはクラス優勝。ワークスチームの130 Lも、グループAで勝利している。

その後、シュコダはC155 BYRをグループB仕様の130 LRへアップグレード。エンジンは1289ccのままだったが、専用カムにツイン・デロルトキャブレター、コスワース社のバルブが組まれ、圧縮比も高められ、131ps/7500rpmを獲得している。

5速MTのケースは、アルミニウム製へ置換し軽量化。リアエンジンによる、少し気まぐれな挙動を鎮静させた。ザックス社のサスペンションで、高速安定性も高められた。

ボンネットやエンジンカバー、ドアはアルミ製。サイドとリアのウインドウはアクリル製になり、ここでも車重が削られた。ダッシュボードは量産車と変わりないものの、中身は純粋なラリーマシンだといっていい。

完成後は、シュコダ・チャレンジシリーズへ3年間出場。最近は、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードやシルバーストン・クラシックなどのイベントで、勇姿を披露している。

比較的落ち着いた挙動 戦闘力は間違いない

車内は、フロア部分がチェッカーパネル。ロールケージを避けて身体を滑らせ、深いバケットシートへ腰を下ろす。ファンやスポットライトなどのスイッチが圧巻。助手席のトリップメーターや、左手の油圧ハンドブレーキ・レバーが、即戦力なことを伝える。

燃料ポンプとイグニッションのスイッチをオン。スターター・ボタンを押すと、吸気と排気のノイズが車内へ入り乱れる。ステアリングホイールは小さめで、ロックトゥロックは2.8回転。低速域でも、重すぎることはない。

シュコダ130 LR(グループB/1985〜1989年/英国仕様)
シュコダ130 LR(グループB/1985〜1989年/英国仕様)

ツインキャブとハイカムが組まれたエンジンでも、ラリーステージを積極的に走るには充分な回転数が求められる。リアエンジン的な、オーバーステアに悩まされることはない。セミトレーリングアームのリアサスペンションが、比較的落ち着いた挙動を示す。

どちらかといえばアンダーステア。ハンドブレーキのパッドが硬すぎるのか、旋回時に引いてもその傾向は大きく変化しない。それでも、130 LRのラリーでの戦闘力は間違いなさそうだ。

特にリアエンジンが生む、トラクションは絶大。ワダチに足を取られつつ、シルバーストンのオフロードコースを我が物顔で突き進む。オーナーのメリングは、もっと積極的に運転しても大丈夫だと話していたが。

この続きは、3台のワークス・シュコダ 130/フェイバリット/120 ラピッド(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

3台のワークス・シュコダ 130/フェイバリット/120 ラピッドの前後関係

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