夢のように走った「RR」 3台のワークス・シュコダ 130/フェイバリット/120 ラピッド(2) クラス優勝の常連

公開 : 2024.06.02 17:46

ブランドイメージ向上のため、シュコダが選んだのはラリー 東欧のポルシェという異名を持つ130 RS サーキットでも強かったリアエンジン 3台のワークスマシンを英国編集部がご紹介

1992年からの20戦中19回のクラス優勝

1987年にシュコダ130、通称エステルの後継モデルとして登場したのが、フェイバリット。後輪駆動から前輪駆動へ置き換わっても、世界ラリー選手権で勝つという、ブランドの意志は変わらなかった。

最終シーズンとなる1993年でも、ヴォグゾールオペル)に次ぐ2位にランクイン。1992年からのカウントで、20戦中19回のクラス優勝という、圧倒的な強さを示した。

シュコダ・フェイバリット 136 L(グループN/1989〜1995年/英国仕様)
シュコダ・フェイバリット 136 L(グループN/1989〜1995年/英国仕様)

L910 ORPのナンバーを下げたシュコダ・フェイバリットはN1仕様の136 Lで、当時のドライバーはウラジミール・ベルガー氏。クラス優勝は四輪駆動のスバル・ヴィヴィオに奪われたが、2位を掴んだ。

その後、1994年から1997年のラリーにも参戦。最近では2000年代初頭のイベント、英国のロンバード・リバイバルでも元気な姿を披露している。だが、そこでオリジナルの1.3Lエンジンは昇天してしまったそうだ。

10年ほど寝かされるが、現オーナーのサイモン・デイリー氏が購入。1990年代のシュコダにも載っていた、フォルクスワーゲン・ベースの1.6L AEEユニットへ置換され、かつてのナンバーのまま公道へ復活した。

将来的には、1993年仕様へ忠実に戻したいと、デイリーは考えている。フル・ロールケージにトリップメーター、補助メーターなどが並ぶ車内は、グループNらしく量産車と変わらない雰囲気を強く漂わせる。

オンロードでの安定した能力を獲得

車重は800kgと軽く、フロントタイヤのグリップは凄まじい。しかし、現在の最高出力は147psで、オリジナルの2倍近くあり、タイトコーナーではオフロード用タイヤが簡単にスピン。脱出加速時には、盛大なトルクステアとの格闘が求められる。

ストレートカットのギア比は低い。力強いエンジンは扱いやすく、サウンドも聴き応え充分。現役だった頃そのままというわけではないが、クラス優勝の常連だったフェイバリットの勇ましさは変わらないだろう。

シュコダ120 ラピッド・クーペ(グループN/1983〜1990年/英国仕様)
シュコダ120 ラピッド・クーペ(グループN/1983〜1990年/英国仕様)

他方、泥や岩と距離をおいていたのが、サイモン・ディキンソン氏がオーナーの、1983年式シュコダ120 ラピッド・クーペ。有能で信頼性の高いコンパクトカーであることをサーキットで訴求したい、英国シュコダの期待を背負った1台だ。

この120 ラピッド・クーペの発表は、1982年のロンドン・モーターショー。スタイリッシュな2ドアのフォルムだけでなく、セミトレーリングアーム式サスペンションとラック&ピニオン式ステアリングが与えられ、オンロードでの安定した能力を獲得していた。

英国でのクラスE、1300cc以下のカテゴリーで戦ううえで選ばざるを得なかったのが、サルーンと同じ最高出力57psの1174ccエンジン。許されていたチューニングは、車高を下げることと、フロントへ大容量のガソリンタンクを積むことだけだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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