BYDが「ロンドンバス」 最大500kW充電に対応、2階建て電動バスを導入
公開 : 2024.05.23 18:05
BYDが2階建てバス「BD11」を発表した。英ロンドン市内を走る「ロンドンバス」として採用され、まもなく運用が開始される。パンタグラフにより最大500kWの超急速充電も可能だ。
複数の充電器を同時に使用可能
中国の自動車メーカーであるBYDは5月21日、新型の2階建てバス「BD11」を英国で発表した。電気で走るバッテリーEVで、新しい “ロンドンバス” として採用される。
英国ではBYD製バスが数多く走っており、その累計販売台数は1800台に達する。
新型BD11のバッテリー容量は532kWhで、現在英国で販売されている電動商用車としては最大である。
使用可能容量(ネット値)は457kWhで、航続距離は未公表だが、1kWhあたり1.4km以上走行できることから640km前後と推定される。BD11はモジュラー・バッテリー・システムを採用しているため、使用状況に合わせてバッテリー容量を変更することができる。ほとんどのロンドンバスは、1日に160~320kmを走行する。
BYDはBD11の特徴として、同社が独自開発したLFPバッテリー「ブレード」の安全性と耐久性をアピールしており、耐用年数は12~20年間と示唆している。修理や交換のコストも比較的安く抑えられる。
バッテリーは商用車用プラットフォーム「e-Platform 3.0」の構造体の一部として機能し、乗り心地と剛性に良い影響を与えるという。また、このプラットフォームは居住空間を最大化するとともに最小旋回半径8.0mを実現するインホイール(車輪内蔵型)モーターと、アクティブ・サスペンションを特徴とする。
充電はパンタグラフ接続(オプション)により最大出力500kWに対応する。従来型の充電ポートも車体に備えており、一度に複数の充電器を接続して充電時間を短縮できるという。
ボディサイズは全長10900mm、全幅2550mm、全高4300mm、ホイールべース5440mm。
進められる電動バスの普及
英国の公共交通機関の複雑な入札手続きを考慮し、BD11の販売予測については言及されていないが、BYD UKの商用車担当マネージング・ディレクターであるフランク・ソープ氏は、ロンドン市内の標準的なバスになることを「望んでいる」と語った。
現在の代表的なロンドンバスはライトバス社のニュー・ルートマスター(New Routemaster)で、2012年から市内で運用されている。ロンドン市長時代に導入を後押ししたボリス・ジョンソン氏にちなんで「ボリス・バス」とも呼ばれている。
ニュー・ルートマスターは2017年に生産が終了し、2030年までにすべて電動バスにするという市の目標に沿って、今後数年間で段階的に廃止される予定だ。
BD11は2024年第3四半期に発売され、数か月後には1階建て仕様が登場する。2025年末には屋根の低い “地方型” 2階建て仕様も登場予定だ。
英国ではバスの電動化が進められている。日本の自工会に相当する英国自動車製造販売者協会(SMMT)は、英国の1階建ておよび2階建てバスの40%以上がゼロ・エミッション車であり、「バスは欧州最大のグリーン自動車市場として、英国の輸送部門の脱炭素化競争をリードしている」と述べた。
ロンドンのバス市場規模は英国全体の6分の1以下に過ぎないが、電動バスの納入数では全体の半数を超えるという。これについてSMMTは「大気質の改善や騒音公害の低減、快適な乗車体験が偏在している」とした。
脱炭素に向けてあらゆる車両の電動化が求められる中、公共交通機関は利益率が低く、2020年のパンデミック(新型コロナウイルス発生)によって乗客数が減っていることからEVシフトが難しいと言われている。SMMTは、電動バスは従来のエンジン車よりもかなり高価であると指摘する。
BD11の価格は明らかにされていないが、最近の報道によると、ロンドン市内の交通事業者ゴー・アヘッド・グループは、BYDに100台以上のバスを1台約40万ポンド(約8000万円)で発注するようだ。
BD11は中国で生産される見込みだが、使用部品の約34%はEU域内から調達しているとソープ氏は語った。