スマート#3 詳細データテスト クラス水準以上の動力性能 優れた基本設計 物足りない細部の仕上げ

公開 : 2024.05.25 20:25  更新 : 2024.05.31 19:42

走り ★★★★★★★☆☆☆

ボルボEX30の例を考えると、このクルマでもうるさいドライバーモニタリングや制限速度警告システムを無視して話を進めるわけにいかない。どちらもイージーなドライバビリティの障壁に思えるが、どちらもオフにする操作が十分にシンプルだとは言い難い。

正確にいうなら、制限速度ブザーはEX30のシステムほどでしゃばりではない。これより徐々に介入してくるシステムもあるのだが。また、ドライバーモニタリングシステムもボルボほどうっとうしくない。というのは、率直に言って、運転情報の表示部があるべきところにあるからだ。

このクラスのEVとしては速いほうだが、安全装備をカットしてからでないと走りに支障が出る。
このクラスのEVとしては速いほうだが、安全装備をカットしてからでないと走りに支障が出る。    JACK HARRISON

それでも、われわれは走り出す前にどちらも切るし、それは車線逸脱警報やACCの自動速度適合機能も同様。運転中に気が散らないようにするためだ。

しかし、それら4つを切るには、タッチディスプレイの3つのメニューを開く必要がある。しかも、どれも2〜3階層潜らなければならない。しかも、どれもデフォルトでオンになる設定なので、アクセスはしやすいに越したことはない。

#3の、公道上でのパフォーマンスは強力だ。このサイズでこのタイプのクルマなら0−97km/hは6.5〜8.5秒、48−113km/hは5.5〜7秒といったところ。しかし#3は、それぞれ6秒と5秒を切る。もっとスポーティなクルマで見られるような数字だ。発進はプログレッシブで安定しているが、歩くより速いくらいのペースになってくるとトルキーでレスポンスもよくなる。高速道路の速度域でも加速が衰えず、97−129km/hが3.8秒と、フォルクスワーゲンID3の5.1秒を凌ぐ。

エネルギー回生のマネージメントは、とくに強くはない。パドルなどの物理的コントロールは用意されないので、運転しながら素早く調整するのは簡単ではない。メニューから回生の効きを調整することは可能だが、完全にカットすることは、どの走行モードでもできない。

瞬間的ながら、ドライバビリティに問題を生じる回生のラグがあるのは#1と同様で、そこまで大きくはないがEX30にもみられた。ブレーキペダルの軽い圧をかけて回生を効かせず、スロットルを緩めて惰性で走るくらいしか、対処法はない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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