スマート#3 詳細データテスト クラス水準以上の動力性能 優れた基本設計 物足りない細部の仕上げ

公開 : 2024.05.25 20:25  更新 : 2024.05.31 19:42

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

走らせ甲斐のある道を飛ばした際の挙動や操舵、旋回、そうした全体的な動きは、そこそこ俊敏でバランスが取れていて、十分に制御が効いている。しかし、それよりはっきりしているのは、もっと入念にチューニングすれば、よりよく魅力的な走りに仕上がったということだ。

路面がいいところでのコーナリングは、グリップが一貫して強力で、ボディはバタつかず、シャシーバランスもまずまずいい感じ。ではあるのだが、横グリップを試そうとしてやりすぎると、スタビリティコントロールシステムがすぐにフロントブレーキをかける。すると、後輪から来る表情豊かな横方向の挙動がすぐさまガッチリと抑え込まれてしまう。ESCオフモードを選んでいてもそうなのだ。

シャシーのポテンシャルは高そうだが、走りはそこそこ。チューニング次第で、アジリティも挙動も改善できるはずだ。
シャシーのポテンシャルは高そうだが、走りはそこそこ。チューニング次第で、アジリティも挙動も改善できるはずだ。    JACK HARRISON

ステアリングは手応えもペースも直観的だが、ややゴム感があり、路面からのフィードバックに欠ける。そのため、フロント外輪が物理法則に負けるポイントがほとんど感知できない。しかも、重心が低いのに、ここにかかる力は大きい。

路面が平坦でなくなると、それを思い知らされる。上下方向のボディ挙動のダンピングは許容度が過度に大きいので、良好だった横方向のボディコントロールが悪化するのだ。

つまり、波打ちやピッチング、ロールが大きすぎなければ、いい仕事をしてくれるクルマということになる。スマートのダンパーが、それらへ素早く対応して動かすチューニングではないからだ。

もちろんそれらは、どれも修正可能だ。シャシーの基礎は、プジョーe−308やクプラボーンに対抗しうるスポーティな走りに仕立てるのに向いているように思える。単に#3は、走りが磨き込まれていないということなのではないか。おそらくそれは、開発プログラムの主眼がハードウェアよりソフトウェアに置かれた結果だろう。細部を煮詰めていないだけ、かもしれないが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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