ロンドン市街地にもピッタリ? フォルクスワーゲンID.バズ 長期テスト(4) 過ごすほど小さく感じる

公開 : 2024.06.02 09:45  更新 : 2024.06.19 08:27

過去の栄光を今に蘇らせたVW ID.バズ チャーミングな見た目の電動ワンボックスの実力は? かつてのファンの心も掴める魅力はあるか 英国編集部による長期テスト

積算1万702km 充電の待ち時間はムダ?

バッテリーEVを充電する待ち時間は、無駄だとお考えの人は多いかもしれない。しかし、案外そうでもない。先週は、高速道路のサービスエリアで充電することになったのだが、フロントシート裏面に畳まれたテーブルを展開し、丁度いい休憩時間になった。

ところが、そのテーブルはノートパソコンを載せるのには小さすぎた。重さに耐えられるほど、ヒンジも丈夫ではない様子。少し仕事しようと思ったのだけれど。

フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイルと、筆者、フェリックス・ペイジ
フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイルと、筆者、フェリックス・ペイジ

積算1万1651km 家族向けのワンボックスEV

グレートブリテン島南西部、サマセットで開かれた新モデルの発表会。そこで、競合メディアのジャーナリストと会話する機会があった。上機嫌だった彼は、AUTOCARで働きアパートで暮らす筆者に、ID.バズが本当に必要なのかと冗談交じりに聞いてきた。

「確かに、そうかもしれませんね」。と答えておいた。しかし、家族向けのワンボックス・バッテリーEVだとしても、自分にも非常に適していると考えている。

フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイル(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイル(英国仕様)

実際、道が狭く混雑したロンドン郊外に住んでいる。まだ子どもはいない。今の自宅には、バッテリーEVを充電できる環境もない。

市街地をスムーズに駆け抜けられる、もっと手頃な大きさのモデルは沢山ある。仕事では長距離移動も珍しくないから、内燃エンジンで走るクルマの方が便利ではあるだろう。

ロンドン生活との親和性は驚くほど高い

それでもID.バズは、これまで筆者が試乗したバッテリーEVの中で、最も航続距離が長い。電費効率はベストといえないまでも、感心するほど優れている。

先日の渋滞に揉まれながらの通勤では、6.7km/kWhという驚くような平均値を出してくれた。距離は8kmで、平均速度は25km/h程度だったとはいえ。

フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイルと、筆者、フェリックス・ペイジ
フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイルと、筆者、フェリックス・ペイジ

別の機会に、グレートブリテン島中部のバーミンガムまで、約370km走らせた時の電費は4.3km/kWh。幅が広く背の高い、大きな四角いシルエットのボディと軽くない車重を考えると、充分褒められる結果だといえる。

ほぼ同じルートを、アウディSQ8 E-トロンで走った時は、3.3km/kWhに留まった。ヒーターを使う必要がなく、アダプティブ・クルーズコントロールの制御は105km/hを超える場面がなかったものの、小さな差とはいえないだろう。

ロンドンを横断するなら、もっと適した移動手段があることは間違いない。ID.バズの全長は4712mm、全幅は1985mmあり、中心部の駐車枠だとギリギリ。AUTOCARの立体駐車場は8階にあるのだが、毎回ヒヤヒヤしながら出し入れしている。

とはいえID.バズは、ロンドン周辺での日常生活との親和性が、驚くほど高いと実感している。特に運転席からの視認性が優秀で、交差点や狭い脇道でも想像以上に扱いやすい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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