たった1年で販売終了? 米国の希少車 42選 後編 「大人の事情」で打ち切られたクルマたち

公開 : 2024.05.26 18:25

ポルシェ912E(1976年)

ポルシェの米国部門は、1976年モデルで「912」の名称を一時的に復活させた。912Eは1977年モデルの新型924が出るまでの “繋ぎ” として投入され、基本的には911の低出力モデルである。フューエルインジェクションの2.0L 4気筒エンジンを搭載し、最高出力86ps、最大トルク12.8kg-mを発生する。

新車当時の価格は1万845ドル(現在のレートで約5万ドル)で、売れ行きの鈍い914(当時7250ドル)とエントリーモデルの911(1万3845ドル)の間に位置する。生産台数については意見が分かれるところで、2099台とする資料もあれば、1200台に近いとする資料もある。現在では、2万3000ドルで販売されている個体もある。

ポルシェ912E(1976年)
ポルシェ912E(1976年)

シボレー・モンツァ・ワゴン(1978年)

シボレー・モンツァ・ワゴンは雑種のようなものだが、かわいそうなことにあまり人気がなかった。余ったシボレー・ベガのボディを使い、モンツァのフロントを移植して作られたモデルだ。フォルムに華やかさを加えるウッド調のトリムも注文できた。

モンツァ・ワゴンのパワートレインは、ベース車と同じ2.5L「アイアンデューク」4気筒と3.2L V6の2種類があった。ハッチバックおよびクーペモデルとともに1978年末に生産を終了し、生産台数は3000台に満たない。

シボレー・モンツァ・ワゴン(1978年)
シボレー・モンツァ・ワゴン(1978年)

ダッジ・リルレッド・エクスプレス(1978年)

リルレッド・エクスプレス(Li’l Red Express)は、トラックには性能を阻害する触媒コンバーターが不要という規制の抜け穴を利用して作られた。自由に呼吸できるようになった360立方インチ(5.9L)V8を最大限に活用し、最高出力225ps、最大トルク47kg-mを発生、0-97km/h加速をわずか6.7秒で達成した。

トラックの実用性と高性能ビッグエンジンの組み合わせは、パフォーマンス・ピックアップトラックの雛形となった。大型のクロームスタックマフラーなど、デザインの一部はそう簡単には受け継がれなかったが、1年間で2188台が販売された。

ダッジ・リルレッド・エクスプレス(1978年)
ダッジ・リルレッド・エクスプレス(1978年)

フォードマスタングマクラーレンM81(1980年)

マスタングの「良き相棒」といえばシェルビーだが、1980年にフォードが手を組んだのはマクラーレンだった。マクラーレンの米国支社を通じて専門知識を吸収し、フォード製2.3Lエンジンのターボチャージャー版を開発、最高出力190psを発生した。しかし、市販車では排ガス規制をクリアするため132psに抑えられ、0-97km/h加速は9.8秒、最高速度は150km/hにとどまる。

M81はマクラーレンのトレードマークであるオレンジカラーで仕上げられ、大型化したフェンダーに合わせてボンネットも大きく膨らんだ。サスペンションも改良され、室内にはレカロのスポーツシート、スチュワート・ワーナー製メーター、専用デザインのステアリングホイールが装備されている。

フォード・マスタング・マクラーレンM81(1980年)
フォード・マスタング・マクラーレンM81(1980年)

しかし、フォードが並行開発していたマスタングSVOモデルに資金を振り向けたため、249台生産の計画がわずか10台で終わってしまった。現在でも時折オークションに出品され、10万ドル近い価格で取引されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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