リセール・バリュー対決

公開 : 2014.12.19 23:50  更新 : 2017.05.29 19:51

ドライバーズカー対決 – ミニ・ペースマン・クーパーS vs トヨタGT86ジアッロ・エディション

セルフ-レベリング・ヘッドランプがミニ・ペースマンに必要なのか疑問だったけれど、灯りのない夜道を透かすかのように照らすさまをこの目でみて、すぐにありがたみを感じるようになった。ハンドルを切って方向転換を試みれば、このヘッドランプが自動的に進行方向を照らそうとしてくれるのだ。

ただしその調整速度はお世辞にも速いとはいいがたく、不規則なペースマンの挙動のせいでうまく照射範囲を定められずにいる。あまり穏やかな気持でいられないのは残念だ。

不規則な挙動と書いたが、ペースマンにはボディ・ピッチに関する問題を宿命的に抱えている。誤解を避けるためにはじめにいっておくが、ミニ・ファミリー史上最低とまではいうつもりはない。けれども短いホイールベースと硬めのスプリングが起因して、どうしても見逃すことのできない不安定な動きをするのだ。

その一方ペースマンにしかない強みもある。3年間ごく一般的に使用した場合の、価格下降が非常に緩やかなのだ。同じように使用した場合、GT86の方が平均的に8%価値が下がる傾向にある。また購入価格もGT86の方が英国では高い。

しかしここにきて、われわれは ’コスト’ と ’バリュー’ に関する概念の違いに気づいた。3年間GT86とペースマンを同じように乗った場合、英国内で支払う場合はGT86の方が高くついてしまうけれど、だからといって、ひとたびGT86の敏捷性と楽しさを味わってしまうと、乗らずにはいられなくなるのだ。

ペースマンの所作は、すべてにおいて必死な印象がある一方、GT86はペースマンで成し得なかったところをやすやすと乗り越える。そしてドライバーを高いレベルで満足させてくれる。

かたや小洒落たハッチバック、かたやスポーツカーなのだから、それくらいの違いがあっても当然だという意見もあるかもしれないが、2ドアで(どちらも一応)4座のクルマを比較検討した時に、許せる範囲の価格差ならばAUTOCARの読者諸兄ならば、運転して楽しいクルマを選ぶのではないだろうか。

意外に思うかもしれないけれど、実はGT86の乗り味の方がペースマンよりも柔和だ。また重心位置の低さや、好ましい重量配分のおかげでひとつひとつの身のこなしに無理がない。ギュッと高めたステアリング・ラックと、硬いショート・スプリングを組み合わせるペースマンに比べると不自然なところがまるでない。

直線だけならばおそらくペースマンの方が速い。しかし一歩田舎道に入り込めば、バンプステアやトラクションの不足、ボディの動きや制動力の不安定感などがどうしても気になってくる。GT86に追いつくなど、かなり必死にならない限り難しい。

一方のGT86はどのような状況下でもバランスを失うようなことはない。常に密にドライバーとコミュニケーションをとることができ、レスポンスも非常にナチュラルだ。コーナリング時の感触もとても気持ちがいい。どれくらい速いかではなく、どのようにして速く走ることができるかを常に考えながらドライビングするのはとても楽しい行為なのだ。

日本車を英国で乗るとなると、3年間で約£3,000(56万円)程度の追加予算が必要となってしまううえに、GT86は、やや実用性も劣ってしまうのも事実。しかし考えて欲しい。1週間分に割ればたったの£20(3,700円)程度の価格差なのだ。欠点が多いFF車を買うかわりに、完璧なハンドリング特性を持ち合わせたFRの ’アミューズメント・カー’ が手に入ると考えれば、こんな素敵な話はないのではなかろうか。

ミニ・ペースマン・クーパーSチリ・パック

価格 £24,795(456万円)
最高速度 220km/h
0-100km/h加速 7.4秒
燃費 16.7km/ℓ
CO2排出量 139g/km
乾燥重量 1380kg
エンジン 直列4気筒1598ccターボ
最高出力 190ps/5500rpm
最大トルク 26.6kg-m/1700rpm
ギアボックス 6速マニュアル

トヨタGT86ジアッロ・エディション

価格 £27,495(450万円)
最高速度 225km/h
0-100km/h加速 7.6秒
燃費 12.8km/ℓ
CO2排出量 181g/km
乾燥重量 1275kg
エンジン 水平対向4気筒1998cc
最高出力 200ps/7000rpm
最大トルク 20.9kg-m/6400rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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