極上「4.0L V8」へ最大限に浸れる! メルセデスAMG GT 63へ試乗 ダイレクトでドラマチック

公開 : 2024.06.06 19:05

特別感がやや薄れたインテリア 素晴らしいV8

インテリアは、先代までの強い主張がやや薄れた印象。大きなトランスミッショントンネルは姿を消し、センターコンソールは低く小柄に。実用性は増したといえる。車載機能の多くは、縦に長いタッチモニターへ集約されている。

運転姿勢は良好。ルーフが高くなったことで、頭上空間には余裕がある。サテンクロームの装飾と、艶の深いカーボンファイバー製パネルが美しい。とはいえインテリアの雰囲気は、最新のメルセデス・ベンツとして普遍的なものにも感じるだろう。

メルセデスAMG GT 63 4マティック+ プレミアムプラス(英国仕様)
メルセデスAMG GT 63 4マティック+ プレミアムプラス(英国仕様)

後席は背もたれが起き気味だが、大人でも短距離移動できる広さを確保。荷室容量は321Lで、後席の背もたれを倒せば675Lへ拡張する。この手のモデルとしては、かなり広い。

観察を終えて、エンジンを始動させてみよう。AMGのV8ユニットは、相変わらず素晴らしい。運転体験の中心をなしている。その気になれば攻撃的に反応し、狂気の勢いでパワーとノイズを放出するものの、平時は手懐けやすく音量は控えめだ。

先代から車重が増えたといっても、公道では許容しきれないほど速い。改良を受けたことで、これまで以上にレスポンスは鋭く意欲的。磁性流体を用いたエンジンマウントが、上質さも高めている。

ツインスクロールのツインターボが目覚めるのは、2500rpm以上。アクセルペダルを踏み倒すと、息を呑むようなトルクが沸き立つ。そして、7000rpmのレッドラインまで強烈にエネルギーを増大させていく。

硬いサス ダイレクト感やドラマ性を追求

ドライブモードを引き上げれば、エグゾーストノートも勢いを増す。アクセルオフでは、オーバーランの破裂音が入り混じり、聴き応えたっぷりだ。

9速ATも優秀。マニュアル・モード時はデュアルクラッチAT並みの素早さで、特にシフトアップ時の間髪入れない感じが興奮を誘う。オート・モード時は、転じてスムーズ。130km/hでの巡航は、9速で1800rpm程度。穏やかに目的地へ向かえる。

メルセデスAMG GT 63 4マティック+ プレミアムプラス(英国仕様)
メルセデスAMG GT 63 4マティック+ プレミアムプラス(英国仕様)

ハイテク満載のシャシーは、プラグイン・ハイブリッドの車重にも備えたもの。1895kgのAMG GT 63を、余裕で受け止める。ドライブモードは複数用意されるが、好みの設定を登録可能。ワイルドなマッスルカー的な個性は、最新型も受け継いでいる。

コンフォート・モード以外の乗り心地は、荒れた路面で硬さを実感。ステアリングは、スポーティなモードを選ぶと切り始めから鋭くなる。

四輪駆動とフロントのネガティブキャンバーが相まって、カーブの入口ではノーズから吸い込まれていく。出口では、直進状態へ戻る瞬間に僅かな抵抗感がある。

旋回中の路面の凹凸は、予想以上に拾うようだ。サスペンションをソフト側へ戻すと、ステアリングの落ち着きが増す。しなやかな挙動で、直感的に運転できる。

操縦性は、洗練度や繊細さと引き換えに、豊かなダイレクト感やドラマチックさが追求されている。サウンドもうるさい。生々しく反応したがる、ワイルドなAMGだ。

燃費は、高速道路を穏やかにクルージングさせた状態で9.9km/L。もちろん585psを頻繁に引き出せば、みるみる悪化する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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