モーターは「ホイール」の中! べデオ・ランドローバー・ディフェンダー EVへ試乗 低価格化へつながる?

公開 : 2024.06.24 19:05

静かでキビキビ 悪路での運転練習に理想的かも

筆者が初代ディフェンダーを運転したのは、だいぶ前だ。ディーゼルエンジンのノイズが、車内へ大きく響いたことを覚えている。現代の技術者なら音振の酷さに呆れるかもしれないが、それもクラシックカーとしての味だった。

エレクトロモッドされたディフェンダー 110は、スタートボタンを押しても極めて静か。重たいクラッチペダルを踏む必要はない。

べデオ・ランドローバー・ディフェンダー EV(プロトタイプ/英国仕様)
べデオ・ランドローバー・ディフェンダー EV(プロトタイプ/英国仕様)

ハンドブレーキ・レバーは従来のまま。曖昧なステアリングの反応は変わらない。これを失ったら、ディフェンダーらしさは一層薄れるだろう。

試乗は、ファーンハムの市街地からスタート。右足の角度に合わせて、線形的で滑らかにパワーが展開される。キビキビと走れるほど、加速の勢いは鋭い。息が詰まるような、圧倒的なトルクは放たれない。

回生ブレーキは自然。ブレーキペダルを踏まずに止まれる、ワンペダルドライブに対応する。ディフェンダーのカタチをしているが、渋滞に紛れても運転しやすい。

流れが速い、郊外の道でも問題なし。優しい揺れがお尻へ伝わるのを感じながら、記憶と違わない感触のステアリングホイールを回す。

続いてオフロードへ。デモ車両には、テレインレスポンスやドライブモードは備わらない。両手両足で、直接操ることになる。悪路での運転練習に理想的かもしれない。

ホイールの内側へ、モーターが入っている実感はない。比較対象がないから評価しにくいが、ぬかるんだ道をスルスル進んでいく。さほど過酷なルートではなかったものの、難しいことは一切なかった。

さらに魅力的になったと感じる人はいる

電動化されたことで、魅力の一部がなくなったと感じる人はいるだろう。反対に、さらに魅力的になったと感じる人もいるはず。クラシックカーを現代化して、日常的に乗りたいと考える裕福なオーナーは、少なからず存在する。

このディフェンダー 110は、同社が掲げるリボーン・エレクトリック・アイコンと呼ばれるプログラムの、最初のデモ車両。CEOのオスマン・ボイヤー氏は、実際に普段使いしていると話す。子どもの学校への送迎にも活躍している。

べデオ・ランドローバー・ディフェンダー EVと、ベデオ・グループのCEO、オスマン・ボイヤー氏(右)
べデオ・ランドローバー・ディフェンダー EVと、ベデオ・グループのCEO、オスマン・ボイヤー氏(右)

ベデオ・グループが、直接クルマを売る計画はない。エレクトロモッドを実施する企業へ、独自の電動パワートレインを提供することを、事業の中心に据えたいそうだ。

それに向けて毎年1台ずつ、デモ車両としてクラシックカーを電動化する計画が立てられている。空冷のポルシェ911も、そこには含まれているらしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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