ポルシェ928似のヘッドライト 知られざるフィアット125 ヴィニャーレ・サマンサ(2) シャシー技術の高さへ驚く

公開 : 2024.06.09 17:46

928に似たヘッドライト 立派な加速力

大きいドアは、ジェンセン・インターセプターと同じアイテム。ヴィニャーレ社は、そのボディ製造も請け負っていた。

ヘッドライトは、後のポルシェ928にも似ている。ベースとなったアイデアは、1963年のコンセプトカー、ベルトーネ・テストドゥだといわれている。ただし、当時のモーター誌による試乗レポートでは、夜間に充分な明るさを得られなかったという。

フィアット125 ヴィニャーレ・サマンサ(1967〜1970年/英国仕様)
フィアット125 ヴィニャーレ・サマンサ(1967〜1970年/英国仕様)

インテリアは、1960年代後半の量産モデルとして変わった部分はない。装備は充実している。ステアリングホイールはナルディ社製でスポーティだが、シートは快適性重視。ランバーサポートが、しっかり腰を支えてくれる。

AピラーとBピラーは細い。車内は明るく、周囲を見通しやすい。大きなスピードメーターは、時速120マイル(約193km/h)まで振られ、タコメーターは8000rpmまで。レッドラインは6200rpmに設定されている。

1.6L直列4気筒エンジンは、91ps/5600rpmと12.9kg-m/3400rpmを発揮し、0-97km/h加速は12.6秒だった。馬力を考えれば、立派な加速力といえる。

サウンドに特徴があるわけではないが、2500rpmを過ぎると力強さが増す。3750rpmにも、パワーの山がある様子。トップギアの4速で5000rpmまで引っ張ると、134km/hに届いた。

フィアットのシャシー技術の高さへ驚く

ベースとなったフィアット125のサルーンは、四角い見た目で運転しやすいクルマだった。それより60kg重いサマンサも、同様に扱いやすい。

ステアリングラックは、旧式なウォーム&ローラー式。比較的軽くステアリングホイールを回せ、反応も正確だ。

フィアット125 ヴィニャーレ・サマンサ(1967〜1970年/英国仕様)
フィアット125 ヴィニャーレ・サマンサ(1967〜1970年/英国仕様)

サスペンションは、フロントがウィッシュボーンとコイルスプリング、リアがトレーリングアームにリーフスプリングという組み合わせ。同時期のスポーツクーペと比べると、衝撃の吸収性は優秀。フィアットの、シャシー技術の高さに驚かされる。

モーター誌は、サマンサの優れた操縦性を評価しているが、確かにそのとおり。シャシー・バランスが良好で、コーナリングは軽快。前後ともサーボアシスト付きのディスクブレーキが備わり、ペダルの感触は希薄なものの、制動力は不足なく高い。

残念なことにクラッチが滑り気味で、存分な試乗は叶わなかった。とはいえ、乗り心地が素晴らしいことは確かめられた。第一印象に関わらず、信頼関係を築けると感じた。

フリクソスの気まぐれのような大量注文は、博打的な野心の延長だったのだろう。彼の人物像には、サマンサと同じくらい興味を抱ける。一風変わったフィアットが一定数生産され、今でも生き残っているのは、大胆な彼の采配のおかげといっていい。

協力:ダレン・カニンガム氏、スティーブ・グリン氏
撮影:リチャード・ドレッジ

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ヘーゼルタイン

    Richard Heseltine

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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