ガソリン車と同等のお値段で! シトロエンe-C3へ試乗 「ぴったり充分」長く使えるイイモノ感

公開 : 2024.06.09 19:05

50km/hまでは活発 最大の強みは乗り心地

英国仕様のパワートレインは2種類で、今回試乗したのは、額面で44kWhの駆動用バッテリーと、112psの駆動用モーターの組み合わせ。航続距離は326kmがうたわれる。

もう一方は、33kWhの容量で199kmの航続距離になるという。ただし、発売は2025年が予定され、詳細な情報は明らかになっていない。

シトロエンe-C3(欧州仕様)
シトロエンe-C3(欧州仕様)

バッテリーはリン酸鉄リチウム(LFP)という新技術のもの。安価で長寿命という点が強みだが、エネルギー密度は高くなく、温度による性能変化が小さくない。シトロエンのCEO、ティエリー・コスカス氏は、低コスト化にとって有望な技術だと主張する。

車重は1416kgと意外なほど軽いが、112psが生む加速力は興奮を誘うものではない。それでも、50km/h程度までのダッシュ力はかなり活発。それ以上の速度になると、勢いが徐々に減じていく。

0-100km/h加速は10.4秒とのことだが、その殆どは50km/h以上で使われている様子。高速道路での追い越しは、追い越し車線の後方車両と充分な距離があることを確認して、計画的に済ませたい。リラックスしてクルージングするのが良い。

e-C3で最大の強みといえるのが、快適な乗り心地。サスペンションも、アドバンスド・コンフォートと名付けられている。油圧バンプストッパーを採用し、比較的滑らかなオーストリアのアスファルトを、スムーズに処理していた。

リアアクスルが少し暴れる場面もあったが、キャビンはそんな動きから隔離されている。平穏な車内が乱れることはなかった。

安っぽさは皆無 長く使えるイイモノ感

グリップ力が高く、コーナーでは安定性にも感心する。優しい加速力や乗り心地と同じく、意欲的に一体感をもって駆け抜けるタイプではない。それでも、ターゲット層が運転体験へ強く不満を抱くことはないだろう。

ステアリングフィールは希薄。直進安定性は、もう少し高くても良い。乗り心地以外では、ジープアベンジャーのバランスが光る。

シトロエンe-C3(欧州仕様)
シトロエンe-C3(欧州仕様)

英国のトリムグレードは、プラスとマックスの2段階。グレードを問わず、タッチモニターやしなやかなサスペンションなどは共通して装備され、マックスを選ぶ必要性は低いかもしれない。

現実的な航続距離は、郊外の一般道中心で250kmから270km程度と考えられる。日常的にストレスを感じる短さとはいえないが、より長い方が費用対効果では望ましい。エアコンは高効率なヒートポンプ式ではなく、冬場は少なからず短くなると予想される。

ガソリン車と変わらないお値段で、目立った妥協のない仕上がりといえる、e-C3。
シトロエンらしく、「ぴったり充分」といった哲学が漂う。安っぽさは皆無で、長く使えるイイモノ感が好ましい。

必要とされる機能を備え、極めて快適で運転しやすい。普段使いのBセグメント・クラスに、幅広い人が納得できるモデルが誕生したことを、大いに喜びたい。

◯:快適な乗り心地 充実した装備 素晴らしい価格価値 
△:感触が薄いステアリング バッテリーEVへの乗り換えを後押しするには不充分な航続距離

シトロエンe-C3(欧州仕様)のスペック

英国価格:2万1990ポンド(約427万円/予想)
全長:4015mm
全幅:1755mm
全高:1577mm
最高速度:135km/h
0-100km/h加速:10.4秒
航続距離:326km
電費:5.7km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1416kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:43.7kWh(実容量)
急速充電能力:100kW
最高出力:112ps
最大トルク:12.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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