打倒「モデル3」 ホンダ、軽量化にこだわった次世代EV 6年以内に新型7車種導入

公開 : 2024.05.29 18:05

ホンダは2030年までに次世代EV「0シリーズ」として7車種を展開する。まったく新しい開発方法を採用し、軽量化と空力性能、走る楽しさを追求する。同時にコスト削減も図り、高い利益率を目指す。

軽量・空力・操る喜び

ホンダは、2030年までに市場投入する7車種の新型EVラインナップ「0シリーズ」の1つとして、テスラモデル3に相当するセダンを開発中だ。EV開発方法を抜本的に改め、軽量化と空力性能を優先し、「操る喜び」を際立たせるという。

ホンダは部品点数の削減や軽量アルミニウム製シャシー構造の採用など、「薄さ」を追求した開発を行っている。シャシーは最終的に、テスタが採用しているようなメガキャスト(高圧高精度鋳造)へと移行していく。

2030年に登場する「小型セダン」はテスラ・モデル3に相当するものとなるだろう。(編集部作成予想イメージCG)
2030年に登場する「小型セダン」はテスラ・モデル3に相当するものとなるだろう。(編集部作成予想イメージCG)    AUTOCAR

また、次世代電動パワートレイン(eアクスル)の軽量化において、シビックなど従来のハイブリッド車で得たノウハウを活用。モーター、インバーター、トランスミッションを1つのユニットに統合し、ホンダの既存EVと比べて約100kgの軽量化を実現するという。

パワーユニットやバッテリーのような重い部品は、ボディ中央の低い位置に搭載される。これによりフロアの厚みが減り、軽量化とスポーティなドライビングポジションにつながる。

従来のクルマでは多数のコンピューターを併用しているが、「頭脳」となるセントラルコンピューターによって車両の各機能を制御することで、コスト削減とデジタル機能の強化を図る。また、「レベル3」自動運転技術の導入も可能にする。

0シリーズの各車の技術仕様は、米国EPAテストサイクルで航続距離300マイル(480km)以上という目標値を軸としている。EPAは欧州のWLTPサイクルよりも実環境を反映したテストで知られる。

目標達成に向け、軽量化と並んで鍵となるのが空力性能だ。

今年初めに発表された0シリーズのコンセプトモデル「サルーン(SALOON)」について、ホンダの常務取締役でデザインセンター担当の南俊叙氏は、「特にこの形を目指しているわけではなく、エモーショナルでありながらも、機能に沿った形を作り出そうとしている」と語る。

0シリーズでもう1つの軸となるのは、2030年までにEVで営業利益率5%という目標である。多くのメーカーがEVで赤字を出している現状を考えると、これは非常に高いゴール設定だ。

ホンダの三部敏宏CEOは以前、「バッテリーのサイズを小さくすることではなく、バッテリー技術について考えたい」として、使用素材や構造の違いが大きく影響すると示唆した。

技術開発に加え、コスト削減のためにバッテリーの内製化も視野に入れている。韓国LGとの合弁バッテリー工場が2025年から米国で稼働し、年間40GWhの生産能力を持つ予定だという。バッテリーのリサイクルと原材料の調達についても見直し、2030年までにバッテリーのコストを20%削減できる可能性がある。

バッテリーに限らず、2030年までに全体の生産コストを35%削減する。

0シリーズのラインナップとして、2026年のセダンを皮切りに「中型SUV」と「エントリーSUV」が加わり、2027年には「3列シートの大型SUV」が登場する。

2028年にはテスラ・モデルYと競合するであろう「小型SUV」、2029年に「スモールSUV」、そして2030年にテスラ・モデル3に相当する「小型セダン」が発売され、7車種からなる次世代ラインナップが完成する予定だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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