頼れる「仕事の相棒」が電動に! フォードE-トランジット・カスタムへ試乗 操縦性はワンボックス最高

公開 : 2024.06.10 19:05

ワンボックスカーでは最高水準の操縦性

135psでも、空荷なら充分すぎるほど強力に感じられたが、リミテッド・グレードでは217psへ引き上げられる。MS-RTを選ぶと、呆れるほどパワフルな285psを得られる。0-100km/h加速7.0秒というから、配達後の帰り道も楽しめそうだ。

ドライブモードは、ノーマル、スポーツ、エコの3段階を設定。サブメニューを辿れば、ブレーキペダルを踏まずに止まれる、ワンペダルドライブにも切り替えられる。

フォードE-トランジット・カスタム L1H1(欧州仕様)
フォードE-トランジット・カスタム L1H1(欧州仕様)

駆動用バッテリーが低い位置へ積まれることで、ディーゼルエンジンのトランジットと比較し、安定性は向上。出だしから鋭い動力性能と相まって、自信を持って運転できる。操縦性は、このクラスのワンボックスカーでは最高水準にある。

積極的にステアリングホイールを回しても、旋回中にアクセルペダルを蹴飛ばしても、シャシーのバランスが乱れることはない。乗り心地も、感心するほどしなやかだ。

走行中の車内は、基本的に静か。高速ではフロントピラーから風切り音が立つものの、気になる点といえばその程度。エンジン音がないぶん、余計に目立つのだろう。軽量化のためガラスが部分的に薄肉化されており、それも影響しているようだ。

駆動用バッテリーの容量は64kWhで、航続距離は325kmが主張される。急速充電能力は最大125kWまで。残量15%から80%までの回復を、約40分でこなせることになる。昼休憩の間にちょうどいい。家庭用の7kW充電器では、8.5時間が必要になる。

ベストセラーの成功を掴む可能性は高い

E-トランジットの車重は2255kgと軽くなく、最大積載量は970kgまで。牽引重量は2300kgに対応する。

英国価格は、4万3380ポンド(約868万円)から。ディーゼルエンジン版が3万2350ポンド(約647万円)からだから、割高に感じることは事実だ。

ちなみに、285psのMS-RTは6万490ポンド(約1210万円)へ上昇する。個性を出したいカーショップのオーナーなどには、魅力的なチョイスかもしれない。

従来同様、乗用車並みに考え抜かれたフォードの商用バン、E-トランジット。極めて機能的で、楽しく仕事をこなせそうだ。これから、ディーゼルエンジンのベストセラーに並ぶ成功を掴む可能性は高い。

◯:素晴らしい操縦性 快適な乗り心地 多彩なボディの選択肢
△:大きい風切り音 実際に押せるハードボタンはもっと欲しい ディーゼルエンジンと比べて短い航続距離

フォードE-トランジット・カスタム L1H1(欧州仕様)のスペック

英国価格:4万3380ポンド(約868万円)
全長:5050mm
全幅:2032mm
全高:1968mm
最高速度:112km/h
0-100km/h加速:12.0秒
航続距離:325km
電費:4.5km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2255kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:64.0kWh
急速充電能力:125kW
最高出力:135ps
最大トルク:42.5kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョージ・バロウ

    George Barrow

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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