原因は “合理性の追求” か マツダ、型式指定で不正認める 15万台に影響も「安全性に問題ない」

公開 : 2024.06.03 23:30  更新 : 2024.06.04 11:45

マツダが緊急会見を開き、計5車種、約15万台を対象に認証不正問題があったと発表。安全性に問題はないとしているが、「ロードスターRF」など現行2車種の出荷を一時停止した。不正の背景には何があったのか。

「今後の安全開発」のため不適切な試験を実施

マツダの「不正」が発覚した。現在販売中のものも含め、計5車種、約15万台で「型式指定」に関する不適切な事案があった。エンジン出力およびエアバッグの安全性について、誤った方法で評価試験を行っていたという。

6月3日、マツダは都内で緊急記者会見を開き、国土交通省に対して型式指定申請における不正行為を報告したと発表した。どのようないきさつで発表に至ったのかは後述するとして、はじめに不正の内容について見ていきたい。

計5車種、約15万台で型式指定の不正があった。
計5車種、約15万台で型式指定の不正があった。

まず、エアバッグについて。過去に生産した3車種で、前面衝突試験における車両の不正加工があった。この試験では衝突時の乗員保護性能を調べるが、本来の車載センサーの衝突検知によるエアバッグの “自然起爆” ではなく、タイマーを用いた “時間指定による起爆” を行っていたという。

対象車種はアテンザ(2014年11月~2018年4月)、アクセラ(2016年8月~2019年2月)、アテンザ/マツダ6(2018年4月~2024年4月)で、いずれも商品改良(いわゆるマイナーチェンジ)後のモデルとなる。

エアバッグは安全性に深く関わる部分だが、なぜこのような不正が起きたのか。ここで鍵となるのは「商品改良」である。

マツダの説明によると、フルモデルチェンジ時にはそれぞれ自然起爆による正しい試験方法で認証を得たものの、商品改良後のモデルでは「乗員保護の影響を緻密に試験する」ために時間指定起爆を採用してしまったという。

商品改良では自動車の骨格は変わらないため、衝突時にセンサーに入る衝撃力も変わらない。設計・開発に携わるエンジニアとしては「今後の安全開発」のために詳しいデータを取りたい。それゆえ、データ取得に有利な時間指定起爆が良いと判断したそうだ。

例えばアテンザでは、商品改良によってインパネ刷新、助手席エアバッグ変更、4WD追加などの変更が加えられている。しかし、骨格が同じである以上、センサーの「衝突検知」能力も従来通り変わらないため、設計基準値に合わせてエアバッグを展開できるタイマーで「乗員保護」のデータを取ろうとしたのだ。マツダは、これが不正事案であるという認識は当時の現場になかったとしている。

なお、対象の3車種はすべて生産終了しているが、マツダ社内で再試験を行ったところ安全性に問題がないことが確認されたという。同社は声明で、「お客様におかれましては、該当する車両に引き続きお乗りいただいて安全性の問題はございません。今後速やかに法規適合性の確認などの適切な対応を国土交通省と相談しながら進めてまいります」と述べている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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