原因は “合理性の追求” か マツダ、型式指定で不正認める 15万台に影響も「安全性に問題ない」
公開 : 2024.06.03 23:30 更新 : 2024.06.04 11:45
エンジン出力試験で制御ソフト書き換え
続いて、エンジン出力の不適切な試験について。対象となるのはロードスターRF(2018年6月~)、1.5Lガソリンエンジン搭載のマツダ2(2021年6月~)の2車種で、いずれも現行車である。安全性に関わるものではないが、マツダは再試験のために対象車種の出荷を一時停止している。カタログ上の数値に影響する可能性もある。
問題の試験ではエンジンの制御ソフトを一部書き換え、法規とは異なる方法でパワーとトルクを測定した。詳述すると、点火時期補正機能の一部を停止させた状態で試験を行い、型式指定の申請データとして使用した。その理由として挙げられたのが「吸気温度の異常」だ。
出力試験は実車ではなく、屋内の試験施設にエンジンを設置して長時間行われる。ところが試験環境では空気が滞留してしまい、実車ではありえないほど吸気温度が上昇し、自動的に点火時期の補正機能が働くケースがあるという。実車であれば走行風が当たって冷えるのだが、マツダは補正制御を一部停止することで実車環境に近いエンジン出力を調べようとした。
法規通りの手順で行えば試験条件での実車状態に合致せず、試験が成立しないとして、ソフトウェアの書き換えに至ったとマツダは説明する。
なお、法規では吸気温度はエアクリーナー導入部で摂氏25度±10度(15~35度)と定められているが、マツダはより条件の厳しい25度±5度(20~30度)で出力試験を行っていたという。
担当部門に「不正の認識」はなかったが…
今年1月26日、国土交通省はダイハツ工業などの不正を受け、自動車関連メーカー85社に対し型式指定申請の不正行為の有無について調査・報告するよう求めた。このうち5月末までに68社が調査完了し、うち4社(マツダ、ヤマハ、ホンダ、スズキ)で不正が確認された。残る17社は調査継続中だが、うち1社(トヨタ)で不正が判明している。
マツダは同省の指示を受けて調査に乗り出したところ、調査対象期間の申請2403件のうち、5件の試験で不正を確認した。生産実績で15万878台、販売実績で14万9313台におよぶ。最も古い車種で約10年前のことだが、なぜ、これまで認知されなかったのだろうか?
マツダの毛籠勝弘CEOは会見で、「昨年の “他社” の件を受け、マツダ社内からも同様の行為があるという話がわたしのところまで上がってきた」と述べた。ここで言う他社とは、ダイハツや日野自動車のことだろう。
社内で点検を進め、話の内容を精査していたところへ1月に国交省からの指示があった。
「悪意による改ざんや隠ぺいではなかった。(試験の)合理性を追求したいというエンジニアの考えがあった」と毛籠CEOは言う。また、開発スケジュールなどによる担当者への「過度なプレッシャー」もなかったとしている。
つまり、今回の不正行為は悪意によるものではなく、合理性を追求した結果起きたことであり、「不正」との認識はなかったのだという。
確かに、このマツダの説明には一定の説得力がある。同社が言うように、実際の安全性や日常生活での車両の使用に大きな影響はないと見ていいかもしれない。その裏に悪意はなかったのかもしれない。しかし、やるべきことをやらなかったのは事実である。
再発防止策として、マツダは以下の3点を挙げている。
1. 試験が認証法規に準拠した状態で実施されたかをチェックする仕組み、およびガバナンス体制の再整備
2. 認証法規に準拠した試験を適正に実施するための手順書の見直し・教育・実践の徹底
3. 認証法規に準拠した試験条件を安定的に満たす設備の整備強化
今回の騒動についてSNSなどでは、メーカー側の認識の甘さだけでなく、法規で定める認証プロセスの複雑さを指摘する声も上がっている。いずれにせよ、マツダは昨年度、過去最高の売上高を記録するなど業績が好調だ。この好調に水を差さないよう、再び問題が起きないことを願う。
画像 まさかの納車延期? 現行2車種で出荷停止に…【対象となったマツダ・ロードスターRFとマツダ2を写真で見る】 全15枚