防げなかった325万台の不正 ホンダ、型式指定で不適切行為 「コンプラ認識の甘さ」認める
公開 : 2024.06.04 06:05 更新 : 2024.06.04 11:45
トヨタやマツダに続き、ホンダでも型式指定の不正があった。ホンダは組織改革などで不正防止に取り組んできたが、今回なぜ防げなかったのか。記者会見で繰り返されたのは「遵法精神」と「誤った解釈」という言葉だった。
過去に生産した22車種で認証不正
本田技研工業(以下、ホンダ)が型式指定における不正を認めた。過去に生産した四輪車で、「試験条件の不備」と試験データの「虚偽記載」があった。対象車種は22車種、計325万台(重複を除く)にのぼる。現行車は含まれない。
6月3日、都内で記者会見を開いたホンダの三部敏宏CEOは、「大変重く受け止めている。遵法意識に問題があった」と述べた。対象車種を使用しているユーザーについては、法規基準を満たしているため使用を続けても問題ないとした。
ホンダの発表は、国土交通省からの調査指示を受けてのものだ。今年1月、国交省は自動車関連メーカー85社に対し、型式指定申請における不正行為の有無を調査・報告するよう求め、その結果5月末までに5社(ホンダ、トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、スズキ)の不正が明らかになった。
台数だけで見ると、トヨタが約170万台、マツダが約15万台、ヤマハが約7500台(二輪車)、スズキが約2万6000台で、ホンダがダントツに多いことになる。では、その不正の内容とはどんなものだったのか?
「騒音」と「エンジン出力」で不適切な試験
まず、2009年2月~2017年10月に実施した「騒音試験」について2件の不適切事案があった。ホンダは試験車両の重量設定において、法規の規定範囲を超えた重量で試験を行い(試験条件の不備)、また試験成績書には実際と異なる重量を記載した(虚偽記載)。その理由として、試験後に設計変更などで重量が変化するケースがあり、量産前の再試験を避けるために「法規よりも厳しい条件」で試験したという。
騒音試験には最も重いグレードで行う「定常走行」と最も軽いグレードで行う「加速走行」の2種類があり、車両重量は目標諸元値に対して±2%の範囲で試験することが義務付けられている。しかし、ホンダは今回の事案で規定よりも厳しく、つまり定常走行ではより重く、加速走行ではより軽く設定した。そして、成績書には規定範囲内の重量を記載したのだ。22車種、63型式、約264万台が対象となる。
ホンダの品質改革本部長である玉川裕執行役は、「車両重量は設計時点で決まるが、製造が始まる前に改良によって重量が増えることがある」とし、「最終的に重量が変化した際に再試験をやらなくて済むという、工数を減らすメリットがあった」と述べた。
直感的には重量を軽くすると条件がやさしくなるように思われるかもしれないが、加速走行では軽い方がスピードが出やすいので、その分騒音も大きくなるという。三部CEOは「定常走行と加速走行では重量によって逆の結果が出る」と補足した。
続いて、2013年5月~2015年6月に実施したエンジンの「最高出力および定格出力試験」では、試験結果のパワーとトルクの数値を書き換えて記載した(虚偽記載)。同じエンジンを複数車種で共有するのは珍しいことではないが、ホンダは一部車種で数値を書き換え、試験成績書に虚偽の記載を行った。これも工数削減を狙ったものだという。
目標の諸元値とは異なる試験結果が出たが、その差がわずかであったため「性能のばらつきの範囲内」と判断し、すでに型式指定を取得している他車種の数値に近づけるよう書き換えることで、追加の解析を避けた。対象は8車種、23型式、約127万台。うち6車種は諸元値よりも上振れた(目標よりも性能が高かった)が、あえて低く書き換えたとのこと。
また、2013年4月~2015年1月に実施したエンジンの「出力試験」では、オルタネーター(発電機)を作動させた状態で試験を行うべきところ、作動させずに実施した(試験条件の不備)。同じエンジンによる別の試験を参考に数値を算出し、オルタネーター作動状態と同等の試験結果と見なした。
この件については、オルタネーターを作動させることがマニュアルに記載されていなかったため、補正値を用いて算出すれば性能上問題ないと判断したという。これも工数を減らすために行ったものだった。対象は4車種、9型式、約44万台。