防げなかった325万台の不正 ホンダ、型式指定で不適切行為 「コンプラ認識の甘さ」認める
公開 : 2024.06.04 06:05 更新 : 2024.06.04 11:45
「都合の良い解釈」と「認識の甘さ」
ホンダの説明を聞く限り、車両の安全性や使用上の大きな問題があるわけではないようだ。騒音試験に関しては法規よりも厳しい条件で行っていたという。エンジンの出力試験に関しても、工数削減のために性能をあえて低く見せるような行為もあった。オルタネーターの作動条件に関しては概ねマニュアル記載ミスと考えていいだろう。
しかし、不正行為であることに違いはない。ホンダは独立した認証法規部門を設けるなど、認証不正の防止に取り組んできたが、なぜ今まで気付かなかったのだろうか? 命に関わる問題ではないとはいえ、累計325万台(重複含めると約435万台)の不正を見逃したことになる。
三部CEOは会見で、「認証を軽視するような企業風土はなかった。正直なところ、当社でこのような問題が起きるとは思っていなかった」と述べた。「都合の良い技術的解釈」と「コンプライアンス認識の甘さ」があったという。
「性能のばらつきについての過大解釈や、ワーストケース(厳しい条件)で通せば大丈夫という考えがあった。当時の現場には、実際の商品については保証できているじゃないかという感覚があり、相対的に遵法性の意識は下にあった」
組織としては不正を防ぐような仕組みを作ってきたが、現場の担当者レベルの “解釈の違い” をマネジメントで補正することはできていなかったようだ。不正を不正と認識できていなかったのは「遵法精神の欠如」によるものであるが、担当者レベルでの悪質性はなかったという。
認証法規部門が設計・開発など他部門に都合の良いように試験内容を改ざんする「忖度」のようなこともなく、また担当者が追い込まれてやったわけではないとのこと。こうした背景と不正内容を考慮し、担当者および経営陣に対する責任追及は考えていないという。
今後の再発防止策として、ホンダは認証法規に特化した監査部門を新設し、令和6年度より運用を開始している。また、令和7年度を目標に業務のデジタル化を進め、試験結果をそのまま成績書に入力するなど人が介在しないプロセスを作り、ヒューマンエラーの撲滅を目指す。
なお、今回の不正の対象車種は多岐にわたるため、2枚目と3枚目の画像にて一覧を掲載しておく。ホンダの二輪車およびパワープロダクツ事業(発電機、耕運機など)では不正は確認されなかった。