バイクとクルマを融合? 3輪のモーガン・スーパースポーツ モアパワーへ応えたプラス4 2気筒から8気筒まで(1)

公開 : 2024.06.22 17:45

バイクとクルマを融合させたような見た目

木製フレームをスチール製パネルで覆うボディは、リアのスペアタイヤと一致するようにカーブを描く。トノカバーは、2座並んだシートの後方に畳まれている。

当時としても小さかったから、旅行で運べる荷物は最小限。収納スペースと呼べる場所は、シートの下くらいしかない。

モーガン・スーパースポーツ(1933〜1939年/英国仕様)
モーガン・スーパースポーツ(1933〜1939年/英国仕様)

ドライビングポジションは、小柄な人なら良好。4スポークの大きなステアリングホイールが、胸の前へ迫る。複数のレバーとケーブル類がキャビンへ不規則に並び、筆者のように不慣れな人へ運転時の混乱を招く。

左側のイグニッション用と、反対側のエアコントロール用、2つのレバーを動かし、スターターのボタンを親指で押すと、エンジンが始動。レバーを上の位置へ戻す。バイクとクルマを融合させたような見た目そのままに、サウンドも特徴的だ。

ペダルは2枚並び、左がクラッチで、右はリアブレーキ。フロアから2本のレバーが突き出ていて、左はフロントブレーキを、右は3速MTを操れる。スロットルは、ステアリング・ハブから突き出たレバーで調整する。ややこしい!

それでも、走り出せば案外すぐに覚えられた。車重434kgと軽いスーパースポーツは、唸るほど機敏。リアタイヤは細い1本にも関わらず、グリップ力が高く、カーブからの脱出加速は鋭い。感心するほど安定している。

トルクは太く、ギア比は高め。80km/h巡航も快適といっていい。シフトゲートは、1速が飛び出たドッグレッグ。ムダを削ぎ落とした、純粋な戦前のクラシックカーらしい体験に溢れている。

モダンなスタイリングの4輪モデル

スーパースポーツ以前から、3輪のモーガンは資金力が限られたドライバーの支持を集めていた。しかし、同時期に売られていた4輪のオースチン・セブンなどの方が、若干安価で車内空間は広かった。現代に通じる操縦系も備えていた。

そこでモーガンが1936年にリリースしたのが、同社初の4輪モデル、4-4だった。交代するように、スーパースポーツは1939年に生産終了。発展型のFタイプも、1952年にカタログから落ちている。

モーガン・プラス4(1950〜1969年/英国仕様)
モーガン・プラス4(1950〜1969年/英国仕様)

4-4という名前は、タイヤが4本で、エンジンが4気筒なことから来ている。シャシーはZフレームと呼ばれた構造のスチール製で、フロント・サスペンションはスライディングピラー式。リアは、リジットアクスルにコイルスプリングが組み合わされた。

ボディは一新され、2シーターの他に4シーターも設定。スーパースポーツと同じく、アッシュ材のフレームが土台になっている。ただし、初期の1267cc 4気筒ユニットは、充分な動力性能を発揮したわけではなかった。

モアパワーの要望へ応えたのが、ワイドなシャシーのモーガン・プラス4。ホイールベースは4インチ(約101mm)伸ばされ、油圧ブレーキを採用し、1950年のロンドン・モーターショーで発表されている。

エンジンは、スタンダード・ヴァンガード社製の4気筒2088cc。当初から、ほぼ倍の排気量へ引き上げられた。

この続きは、モーガン 2気筒から8気筒まで(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

モーガン 2気筒から8気筒までの前後関係

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