「半世紀前」と同じシャシーのロードスター V8エンジンを押込んだプラス8 モーガン 2気筒から8気筒まで(2)

公開 : 2024.06.22 17:46

プラス4用シャシーへ3.5LのV8エンジン

加速は、猛烈と表現できるほど鋭い。7000rpmのレッドラインまで一気に吹け上がり、V6エンジンらしい粒の揃った咆哮が周囲を満たす。トルクが太く、高いギアのまま安楽に巡航できる。しかし戦前のクルマの雰囲気も漂い、不一致感が否めない。

乾燥した路面でも、加速の度にボディが震える。ステアリングはパワーアシストが強すぎ、切り始めで少し神経質。角度が増えるほど徐々にリモート感が増し、望まないキックバックも伝わってくる。

モーガン・プラス8(1968〜2004年/英国仕様)
モーガン・プラス8(1968〜2004年/英国仕様)

ブレーキは良く効くものの、ペダルの感触は不安定。思ったように減速できない。シャシーとパワートレインは、単独では有能といえる。しかし、両者の取り合わせが望ましいとはいえないだろう。

対して、ローバー由来の3.5L V型8気筒エンジンを搭載したプラス8の発売は、1968年へ遡る。技術者だったモーリス・オーウェン氏は、既存のプラス4用シャシーへオールアルミ製ユニットを押し込むという課題へ、見事に応えてみせた。

当初は、ローバーP5 Bというサルーンと同じ、157psの最高出力を発揮。電動ファンの採用などで冷却系が見直され、ダイナモからオルタネーターへ変更するなど、電気系統のアップデートも施された。

今回のトニー・テビー氏のプラス8のように、後期には燃料インジェクションを採用し、最高出力は192psへ上昇。ローバーによる開発のお陰で、後年には4.6L V8も設定された。トランスミッションも、長いモデルライフの中で4速から5速へ変更されている。

最も運転体験の魅力度が高いプラス8

トニーが所有するネイビー・ブルーのプラス8は、1968年の初期型よりシャシーが2インチ(約50mm)広く、アルミ製ボディは4インチ(約100mm)広い。ステアリングにアシストはなく、リミテッドスリップ・デフが組まれている。

キャビンはレザーで仕立てられ、ダッシュボードにはスピードとタコの大きなメーターが2枚。その間に、4枚の補助メーターが並ぶ。ステアリングコラムから伸びるレバーなどは、ローバー由来なことがわかる。

モーガン・プラス8(1968〜2004年/英国仕様)
モーガン・プラス8(1968〜2004年/英国仕様)

3.5L V8エンジンは、期待通り意欲的で素直。ストロークの長いアクセルペダルを傾けると、瞬間的に回転数が上昇する。粘り強く、4500rpm以下でも充分に楽しめる。

モーガンロードスターほど速くはないようだが、V8らしいサウンドが心を満たす。積極的にシフトチェンジする必要はない。500rpmから、滑らかに加速していく。

プラス8は、当時の英国製スポーツカーで、32km/hから128km/hまでの加速が最速だった。車重1t当たりの最大トルクは、29.9kg-mとたくましい。

動的な印象は、設計の古いシャシーの限界付近でもがいている感じ。それでも、ロードスターのように超えてはいない。カーブでは、フロントアクスルが不自然に震えるものの、グリップ力は悪くない。

ステアリングホイールには充分な重さが備わり、キックバックは小さくないが、充分なフィードバックも伝わる。サーボレスのブレーキは、高速域では相応に踏む力が必要ながら、ペダルの感触は好ましい。

爽快に速く繊細。今回の4台のモーガンで、最も運転体験の魅力度は高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

モーガン 2気筒から8気筒までの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

モーガンの人気画像