【注:007の撮影カットではありません】 ディフェンダー90 V8カルパチアンエディション

公開 : 2024.06.07 17:45

グレーとブラックで固めたランドローバー・ディフェンダー90 V8カルパチアンエディションに試乗します。ショートボディにV8スーパーチャージャー搭載のコンパクトなマッスルSUVが魅せる走りとは?

ディフェンダーにV8は必要なのか?

このグレードがどうして必要なのか?

時折そんなモデルに出くわすことがある。今回のディフェンダーV8がまさにそうだった。

ランドローバー・ディフェンダー90 V8カルパチアンエディション
ランドローバー・ディフェンダー90 V8カルパチアンエディション

理由はいくつかある。フラッグシップモデルであるレンジローバーには過給V8の強心臓が名実ともに欠かせないだろう。だがディフェンダーはそれよりもはるかにカジュアルなイメージがある。

何しろ先代までならイギリスではワークホースとして重宝されていたクルマなのである。パワーユニットに関しても既存のP300(ガソリンの直4ターボ)とD350(ディーゼル直6 MHEV)というラインナップで実用領域は完全にカバーできていたように思う。

スポーツカーなら可能な限り大きなエンジンを積むという正義もあるが、クロスオーバーSUVではどうだろう?

そんな疑問を抱きながら今回ステアリングを握ることになったのはディフェンダーV8の短い方、2ドアの90である。グレーとブラックで固めたカルパチアンエディションは、遠目には007シリーズで飛び跳ねながら活躍していた悪役っぽく見えた。

だが実車を目の当たりにすると、悪っぽい黒ではなくタキシードの黒のような存在感に圧倒される。

4ドアの110からホイールベースを435ミリ切り詰めたショートボディは原初のランドローバーから続く伝統的なものだが、そこに525psを発揮する5LスーパーチャージドV8を叩き込むという仕事にはパロディ臭さすら漂っている。実際はどうなのか?

ランドローバー初のスープアップ感

運転席から眺めるダッシュ周りの景色はいつものディフェンダーのそれ。

シリーズ最上級のV8だからといっても特殊な感じはしない。だが走りはじめてみると、普通のディフェンダーじゃないことはすぐにわかる。

ランドローバー・ディフェンダー90 V8カルパチアンエディション
ランドローバー・ディフェンダー90 V8カルパチアンエディション

人工スエード張りで重みのあるステアリングを通して、4気筒モデルより前後とも2サイズ太い(255→275幅)マッシブな4輪がビタッと全面接地している印象が伝わってくる。

普通のCクラスとAMGのC63の違いじゃないけれど、そんな質感の高まり方。これまでのランドローバーでは感じたことのないスープアップ感として映ったのである。

P525と呼ばれるパワートレインはアイドリング付近から最大トルクが溢れ出ているような印象で、スロットルを踏み込むと、思ったよりリアを沈ませることなくズンッと前に出ていく。

ターボユニットであるにも関わらず滑らかな印象のBMW製4.4L V8ではなく、敢えて古典的ともいえる自社製5LスーパーチャージドV8を載せているわけだが、そのほうがトルクカーブが直線的でディフェンダー90 V8のキャラには合っていると感じた。

筆者は4気筒エンジンを積んだディフェンダーの、路面に軽くタッチするような感触、走りが大好きだ。アイポイントの高さと相まって、軽快に馬を走らせているような感じすらするのである。

だがディフェンダーV8のドライブフィールにそんな情緒的な印象はない。いうなれば小さな戦車にでも乗り込んでいるような、そんな感じだろうか。それも脱兎ごとく速いのだ。全く前例がない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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