「史上最高」のロード・ポルシェ 718スパイダー RSへ試乗 カップカー・エンジンを軽いミドシップに!

公開 : 2024.06.23 19:05  更新 : 2024.07.23 11:00

サーキットでなく公道での運転体験を追求した、ポルシェ718スパイダー RS 911 GT3 カップカーのエンジンを軽いミドシップシャシーへ 史上最高のロードカーの1台 英国編集部は絶賛

サーキットでなく公道での体験を追求した「RS」

世界中の殆どのクルマ好きにとって、新しい718スパイダー RSは、手に入れることができない特別なポルシェの1台だ。魔法がかけられたような極上の体験を、直接味わうことは叶わない。

他方、その対極にある極少数の人にとっては、自慢のコレクションを構成する1台に過ぎないかもしれない。自身を満足させる特別なポルシェだとしても、空調の効いた広いガレージに保管され、日光を浴びせることは殆どないはず。

ポルシェ718スパイダー RS(英国仕様)
ポルシェ718スパイダー RS(英国仕様)

9000rpmまで吹け上がる、4.0L水平対向6気筒エンジンの素晴らしさを考えると、許しがたい行為に思える。だが、それが現実だ。

レンシュポルト(レーシング・スポーツ)のイニシャル、RSを冠する718スパイダーは、これまでのポルシェを知っていると異端的な存在に感じられる。サーキット志向だった歴代とは異なり、ひたすらに公道での体験を追求したモデルだからだ。

ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェのラップタイムではなく、ロードカーとして突き詰められている。これまでの同社のRSとは、対極的な1台だともいっていい。

ボディと一体のルーフはなく、18kgと軽いカンバス製ソフトトップを背負う。これにより、オープンエア・ドライブを楽しめても、ボディシェルの剛性は低下する。サスペンションとステアリングの精度には、陰りが出てしまう。

911 GT3 カップカーのエンジンを軽いミドシップへ

技術者のアンドレアス・ブロイニンガー氏率いるポルシェのGT部門は、これまでにもオープンボディを提供してきた。しかし、モデル名にRSが与えられることはなかった。恐らく、的を射ていない2文字だからだ。

718スパイダー RSのサスペンションは、718ケイマン GT4 RSよりソフトにチューニングされている。レンシュポルトには反するアプローチだといっていい。では、なぜ従来の枠を逸脱したRSを提供しようと決めたのだろうか。

ポルシェ718スパイダー RS(英国仕様)
ポルシェ718スパイダー RS(英国仕様)

「911 GT3 カップカーのエンジンを、できるだけ軽いオープントップのミドシップ・プラットフォームへ搭載することが狙いでした。それを達成したのが、これです」。2023年のドイツで開かれた発表会で、ブロイニンガーは力強く述べていた。

彼が目指したのは、最速のRSではない。最も楽しいRSだったとも付け加えた。

718スパイダー RSの開発へ携わった技術者チームは、911 GT3 RSの開発も同時並行で進めたという。それはスポーツカーの911を、ジャーマンメタルのように激しくシリアスに突き詰めたモデルだ。

結果的に718スパイダー RSは、その緊張感を逃がす、バラードのような存在になったのかもしれない。コーナーリングスピードをキリキリに追い求めるのではなく、心の底から楽しめるポルシェとして。

加えて、高回転型の自然吸気エンジンは、時代の変化で今後は量産が難しくなる。思い切ったRSをリリースするのは、今しかなかったのだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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