こう見えて「85%」の電動なんです! ベントレー・ブロワー・ジュニアへ試乗 2000万円の大人のおもちゃ

公開 : 2024.07.19 19:05

戦前のベントレー・ブロワーを85%サイズの電動モデルで再現 正規にライセンス取得済み 洗練された運転体験とは別の次元の面白さ 予想外に温かい周囲の反応 英国編集部がロンドンで評価

予想外に温かい受け止められ方

ロンドン中心部の交差点で止まる。「凄いカッコいいなぁ」。そんなことを、隣のサイクリストが呟く。信号が青へ変わり、静かに発進。「ワォ、電気だ。凄い!」。これははっきり聞こえた。

出発してから15分しか経っていないが、同じような反応が繰り返される。ある人は、満面の笑みで振り返って「最高の一日を楽しんで!」と叫んでくれた。気難しい人が少なくないロンドンとしては、予想外に温かい受け止められ方だ。

リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)
リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)

もっとも、運転している自分はメチャクチャ楽しいから、そんな反応なしでも笑顔。渋滞に巻き込まれても平気。リアシートで撮影するフォトグラファーも、交差点を曲がるたびに、声を上げながら喜んでいる。

この真っ黒なクルマは、リトルカー・カンパニーが仕上げたベントレー・ブロワー・ジュニア。同社はアストン マーティンDB5やフェラーリ250 テスタロッサなど、多くの伝説的なクラシックカーを子ども用サイズのバッテリーEVで再現する、技術者集団だ。

AUTOCARの読者なら、同社の記事を過去に目にされたかもしれない。だが、ベントレーのクラシックを手掛けたのは初めてだとか。最新作を試乗する場所が混雑した市街地だというのは、妥当なのか初めは疑ったものの、実は理に適っている。

オリジナルは1929年製のレーシングカーだが、ブロワー・ジュニアの最高速度は72km/hで、航続距離は104km。郊外を目指せるほどの性能はない。しかもロンドンは、ベントレー・ブランド発祥の地でもある。

大きさはオリジナルの85% ライセンス取得済み

創業者のW.O.ベントレー氏は、1919年に自身初のクルマをこの都市で完成させた。工場の跡地は既に住宅地として再開発されているが、チャグフォード・ストリート47番地に立てられた小さな銘版が、その歴史を静かに今へ伝えている。

ブロワー・ジュニアは、リトルカーが仕上げたモデルでは過去最大の縮尺で設計された。通常は67%(2/3)か75%(3/4)の縮尺で、キャビンは子ども向きの広さしかない。だが、これは85%。それでも、全長と全幅はケータハム・セブンより小さい。

リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)
リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)

オリジナルは、ベントレー・ヘリテージコレクションとして保管される、ル・マン24時間レースを戦った1929年式ベントレー4 1/2リッター・スーパーチャージド・チームカー No.2だ。これを3Dスキャンし、精巧に手作りされている。

従来のモデルと同様に、公式にライセンスも取得済み。アルミニウム製ボディは、同社の職人が成形している。シートやインテリアは、2020年にベントレーが12台販売した、ブロワー・コンティニュエーションと同じルストラーナ・レザーを使っているそうだ。

ダッシュボードには、当時物のメーターが改造されて組まれ、バッテリーの充電量やモーターの出力が表示される。4スポークのステアリングホイールも、精巧に再現された。

ただし、幅が狭いため運転席はボディの中央。ボディフレームは、カーボンファイバー製だという。液晶モニターとシートベルト用ステーが、ちょっと雰囲気を濁している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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