こう見えて「85%」の電動なんです! ベントレー・ブロワー・ジュニアへ試乗 2000万円の大人のおもちゃ

公開 : 2024.07.19 19:05

60km/hでもミュルザンヌを疾走する気分

シャシーは独自のラダーフレーム。サスペンションは、フリクションダンパーとリーフスプリングで構成される。

パワートレインは、大排気量の直列4気筒スーパーチャージド・エンジンではない。駆動用モーターの最高出力は20ps。歩行者へ近接を伝える未来的な人工音が、控えめに放たれる。

リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)
リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)

駆動用バッテリーは10.8kWh。フロントグリルの前に置かれた、スーパーチャージャー・ハウジングを模したケースに、充電ポートが隠れている。

狭い路地を走るのは簡単。全幅は約1.5mしかない。ウインドウやルーフはなく、上半身が露出し、周囲の視界は抜群。道が混雑していても、スルスルと隙間を縫うように運転できる。小さなフロントガラスは殆ど役に立たないが、スピード感は圧倒的。

ロンドン中心部は、時速20マイル(約32km/h)で一律に制限されている。コンフォート・モードはパワーが絞られるものの、交通の流れに不足ない加速が得られる。回生ブレーキは積極的に働く。

途中で片側2車線の道路へ合流。スポーツ・モードへ切り替え、20psを開放する。身をかがめてステアリングホイールを握る。60km/hを少し越えた程度でも、ル・マンのミュルザンヌ・ストレートを疾走しているような気分になれる。

リーフスプリングのサスペンションは乗り心地が悪く、骨まで振動が響く。ウォーム&ローラー式のステアリングラックは、スローレシオで曖昧。だが現代的なディスクブレーキが組まれ、しっかり止まれる。

洗練された運転体験とは別の次元の面白さ

基本的に全開で走れ、小さなロータリー交差点が楽しい。洗練された運転体験とは、まったく別の次元の面白さで満ちている。30km/h程度でも満足できる。気分は前例がないほど特別。注目度の高さも。

ウェストミンスター宮殿やバッキンガム宮殿の前を通り過ぎると、観光客がブロワー・ジュニアへスマートフォンを一斉に向ける。交差点で停まれば質問攻め。みんな笑顔だ。発進時にクラクションを鳴らすと、一層喜んでくれた。

リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)
リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)

冷静に捉えれば、ブロワー・ジュニアに意義があるとはいいにくい。バッテリーEVとしての性能は低く、雨から身を守る装備はなく、カタチは忠実でも大きさは85%だ。しかし、ロンドンでクルマを運転して、こんなに良い気分になれることは滅多にない。

価格も、冷静には受け止めにくい。1台10万8000ポンド(約2160万円)!で、大人のおもちゃだとしても破格。少なくとも生産数は99台だから、希少性は高いといえるが。

10倍は高額なハイパーカーでロンドを運転しても、これほど周囲を喜ばせることは難しいだろう。多くの人が、ブロワー・ジュニアを気に入ってくれたことは明らかだった。筆者もその1人だ。

リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)のスペック

英国価格:10万8000ポンド(約2160万円)
全長:3690mm
全幅:1480mm
全高:1270mm
最高速度:72km/h
0-100km/h加速:−秒
航続距離:104km
電費:−km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:550kg
パワートレイン:電気モーター
駆動用バッテリー:10.8kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:20ps
最大トルク:13.5kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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