流行りはホットハッチからFFクーペに! トヨタ・セリカ マツダMX-6 ローバー220 クーペ 1990年代の煌き(1)

公開 : 2024.06.29 17:45

1980年代のホットハッチに代わり、1990年代に到来したクーペ・ブーム 市民的なトヨタ、マツダ、ローバーの個性が現れた前輪駆動モデル セリカ、MX-6、220の3台を英編集部が振り返る

ホットハッチに代わって流行したFFクーペ

1990年代の欧州で、1つの流行を生み出したのが前輪駆動のクーペだ。1980年代の交通事故増加に伴い、ホットハッチに対する任意保険の金額が上昇。1クラス上のクーペへ、各メーカーが若者向けの路線を変更したのがきっかけといえた。

比較的コンパクトなシャシーに、余裕あるパワーを発揮するエンジンを搭載。スタイリッシュなフォルムをまとい、活動的なドライバーへ訴求した。

シルバーのマツダMX-6と、レッドのトヨタ・セリカ GT
シルバーのマツダMX-6と、レッドのトヨタ・セリカ GT

ハッチバックより車重は増え、プジョー205 GTiに載っていたような、8バルブの直列4気筒エンジンでは充分な興奮を誘えなかった。市民的なブランドだったローバーにトヨタ、マツダは、ターボ化やツインカム化、V型6気筒などの手段で魅力を追い求めた。

ただし、今回取り上げるR8型の220 ターボ・クーペは、実は本当の意味でのローバーではない。開発を進めたのは、当時協力関係にあったホンダ。産業ロボットも日本から輸入され、グレートブリテン島で生産されている。

それでも220 クーペは、R8型の中では最も英国車に近い。4気筒エンジンはローバーが開発し、クーペ・ボディも独自にデザインされている。日英合作ではあったものの、英国寄りのモデルだといっていい。

4年周期でモデルチェンジを続けたトヨタ

220 クーペのスタイリングは、2台の純日本製クーペに並ぶと、直線的で面構成が複雑。リアピラーは緩くカーブし、リアスポイラーも肉付きがいいが、フロントマスクやサイドまわりは直線基調にある。少し調和していないように見える。

R8型サルーンの発表は1989年だったが、クーペの追加は1992年。上下で時代が違っているようだ。ローバーもそれを理解しており、1994年にはフェイスリフトを受け、サルーンと同時にやや丸みを帯びたフロントグリルが与えられた。

ローバー220 ターボ・クーペ(1992〜1995年/英国仕様)
ローバー220 ターボ・クーペ(1992〜1995年/英国仕様)

対するトヨタは、1980年代に世界クラスの自動車メーカーへ躍進。4年周期でモデルチェンジを施す短期サイクルを確立し、スタイリングのトレンドを追い続けていた。

5代目、T180型セリカが発売されたのは1989年。その数か月後には、6代目となるT200型の開発が着手されたという。

短いモデルサイクルを叶えた背後にあったのが、ボディパネルの内側で進められた合理化。1993年に発売されたT200型セリカでも、シャシー設計に関しては前輪駆動化された4代目、T160型のアップデート版といって良かった。

先代以上に個性的なスタイリングを求めて、6代目ではリトラクタブルから独立した4灯ヘッドライトへ変更。少し煩雑なフロントマスクになった。後席や荷室の空間が優先されたことで、リア回りはボリューミーでもあるが、斜め後ろの姿はカッコいい。

有機的にパネルがカーブし、ボディキットも抑揚が強い。その頃は、最先端の見た目のクーペだったことは事実だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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