流行りはホットハッチからFFクーペに! トヨタ・セリカ マツダMX-6 ローバー220 クーペ 1990年代の煌き(1)

公開 : 2024.06.29 17:45

前衛的だった曲面ボディに2.5L V6エンジン

セリカ以上に曲面が多用された姿だったのが、マツダMX-6。特に曲線美が追求されたデザインの1台といえ、220 クーペより発売が1年先だという事実に驚かされる。同時期のフォルクスワーゲンBMWと比べても、前衛的だった。

プロポーションはロー&ロング。フロントノーズは滑らかに仕上げられ、今回の3台では最も大きいエンジンが収まることを感じさせないほど、低く伸びやかだ。

トヨタ・セリカ GT(1993〜1999年/英国仕様)
トヨタ・セリカ GT(1993〜1999年/英国仕様)

同時期のこのクラスのクーペには、フォルクスワーゲン・コラード VR6という強者が存在するが、マツダが採用したのもV6エンジン。ちなみにMX-6だけでなく、323F(ファミリア)やMX-3(AZ-3)などにも、1.8Lや2.0Lユニットが搭載されている。

MX-6に載ったのは、バンク角60度で2.5LのKL型ユニット。オールアルミ製で、ツインカム24バルブヘッドが与えられ、その頃の最新技術が投入されていた。

シリンダーはオーバースクエアで、エンジン高を抑制。前輪駆動のプラットフォームへ横向きに押し込むと、エンジンルームの前後長は伸びたが、スポーティな雰囲気を求めるクーペではロングノーズも悪くなかった。

チューニング度は高くなく、最高出力175psのセリカより排気量が499ccも大きいにも関わらず、167ps。サウンドの特徴は薄く、アルファ・ロメオのブッソ・ユニットのような音響体験は得られない。

しかし、排気量に代わるものはないという格言通り、最大トルクは22.4kg-mと太い。柔軟で滑らかに回り、パワーデリバリーはリニア。高回転域まで引っ張ると、遠くから勇ましい唸りが聞こえてくる。

MX-6やセリカより断然速い220 クーペ

ローバーの220 クーペに載るのは、2.0L直列4気筒ターボ。最高出力は199psとハイチューニングで、ターボラグは小さくない。ブースト圧が高まると、突如猛烈な勢いで突進を始める。

最大トルクも24.0kg-mとたくましく、細いフロントタイヤでは受け止めきれないほど。旋回時にパワーを掛けると進路が乱れる、トルクステアも盛大。制御しきれないほど暴れるわけではないが、ステアリングホイールはしっかり握っている必要がある。

ローバー220 ターボ・クーペ(1992〜1995年/英国仕様)
ローバー220 ターボ・クーペ(1992〜1995年/英国仕様)

そのかわり、MX-6やセリカより断然速い。新車時の英国価格は、3台で1番安かったにも関わらず。目一杯気張らずとも、フルスロットルのセリカ並み。80%程度の気張り具合なら、トルクステアも目立たなくなる。

トヨタの3S-GEユニットは、技術的な完成度で秀でている。自然吸気ユニットとしては高出力型で、排気量1L当たりの馬力は86ps。内部部品は鍛造で堅牢といえ、高度なツインカム・ヘッドを載せていながら信頼性も高い。

基本的な整備だけで、24万km以上使える耐久性も自慢。ミドシップのトヨタMR-2でも、それは証明されている。

しかし、可変吸気システムが実装されていても、同時期のカローラより少し速いかなという程度。そのぶん低回転域から扱いやすく、燃費もカローラ並みに良い。

7500rpmのリミッター目掛けて引っ張れば、トルクで勝るMX-6のペースへ迫れるものの、4気筒ターボには敵わない。本当にパワーを感じられるのは、5000rpmを過ぎた辺りからだ。

この続きは、トヨタ・セリカ マツダMX-6 ローバー220 クーペ 1990年代の煌き(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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